1960年代「芥川賞」おすすめ7選―女性作家の台頭―

文学・言葉
「ライトな作品」と「女性作家」
芥川賞受賞作品まとめ
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芥川賞のオススメ作品を紹介するこのシリーズ。

今回は1960年代から「7作品」を厳選して紹介しようと思う。

そこで1960年代の芥川賞の特徴をあえて上げるとすれば、

  • ライトな作品が現れ始めた点
  • 女性作家の受賞が増え始めた点

ということになるだろう。

ちなみに1950年代はどうだったのかといえば、その受賞者の中に、

  • 阿部公房
  • 遠藤周作
  • 大江健三郎

といったノーベル賞クラスの作家がいる。

1950年代の文学を牽引したのは、「第二次戦後派」や「第三の新人」と呼ばれる連中であり、その作品のテーマは深刻で、文体は力強く厚みのあるものが多かった。

まぁ、シンプルにいって、「重くて乾いた作品」ってのが多かったのだ。

それが1960年代になると、少しずつ傾向が変わっていく

  • ユーモラスな表現
  • 冗長で軽妙な文体
  • 女性が主人公の物語

こんな感じで、まぁ、シンプルにいって「軽くて湿った作品」が徐々に登場し始める

それは「田辺聖子」をはじめとした女性作家の台頭というのも、大きな要因の1つだろう。

もちろん、中には深刻なテーマや、簡潔で無駄のない文体を採用した作品もある。

が、やはり60年代というのは文学界に「ライト」な雰囲気が流れ始めた時代だったと概括できる。

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『夜と霧の隅で』(北杜夫)1960年

作者について

父は、歌人で精神科医の斎藤茂吉。

そんな父の背中を追うように、北杜夫もまた文学と医学の道を歩んだ。

学生時代の北はトーマス・マンという作家と出会い心酔。

文学への思いを強めていった。

東北大学医学部を卒業した北は、慶応大学病院などで精神科医として勤務する。

医師として働く傍らで、処女作『幽霊』を執筆し自費出版する。(ちなみに、売れ行きはたったの13部だったという)

やがて作家として注目されるきっかけが訪れる。

彼は水産庁の漁業調査船の船医となって各国をめぐり、その時の経験を軽妙な筆致で作品に描いた。

それが有名な『どくとるマンボウ航海記』で、出版するや瞬く間にベストセラーとなる。

そして同年、33歳のころ『夜と霧の隅で』で第43回芥川賞を受賞選考委員から絶大な賛辞が送られた。

  • 中村光夫「確かな才能を感じる力作」
  • 丹羽文雄「候補作の中で一際すぐれていた」
  • 井伏鱒二「大きく伸びつつある作家だ」

ちなみに、後に発表される代表作『楡家の人びと』もまた、三島由紀夫から激賞されている。

小説家としての立場を確立させた北は、意欲的に創作を続け、軽妙なエッセイなんかも数多く書いた。

作品について

改めて言うまでもないが、『夜と霧』という有名な手記がある。

フランクルという精神科医による作品で、第二次世界大戦中のアウシュビッツの現実を克明に描いたものだ。

北の『夜と霧の隅で』は、同じ時代、同じドイツで起きた事件を題材にしている

舞台はとある精神病院。

そこに1人の日本人の男が入院していた。

彼の名前は「高島」

彼は妻がナチスに拘束されたことがきっかけで、精神が錯乱。

妄想めいたことを口走るようになったため、1年ほど前から、この精神病院に入院していた。

そんなある日、精神病院に対して、ナチスから命令が下る。

その内容は「精神病患者を安楽死させろ」というものだった。

医師たちは、なんとか患者を治癒しようとあらゆる治療をほどこすが成果はでない。

そしてついに、絶望的な脳手術を行うにいたる。

こんな風に『夜と霧の隅で』で扱われるテーマは、あまりに暗くて重い。

人間の残酷さ、尊厳を奪う行為、極限下での人間の心理、そして自己矛盾・・・・・・

それらはあの『夜と霧』でも描かれていた「人間の真実の姿」であるが、北杜夫は『夜と霧の隅で』において、それを透明感のある端正な文体で印象深く描いている。

救いのない暗澹とした物語ではあるが、読む者の心をつかんで離さない。

精神科医による、本格的な「心理小説」と言えるだろう。

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『蟹』(河野多惠子)1963年

作者について

河野多惠子を一言で紹介するとすれば

「谷崎文学の後継者」

ということになるだろうか。

  • マゾヒズム、
  • サディズム
  • 幼児愛好
  • 乱交 などなど・・・・・・

とにかくテーマは刺激的で狂気的なものが多い。

そして、人間の剥き出しの性や無意識に潜む残虐性を描くのが本当にうまい。

1961年、幼児愛好を描いた『幼児狩り』でデビューし、一挙に注目される。

1963年『蟹』で第49回芥川賞を受賞

女性作家の受賞は、約15年ぶりのことだった。

選考委員の井上靖は、

「きちんとした乱れのない文章」

「女の心理の陰影をよく描いている」

「なかなかしゃれたものだ」

といった賛辞を送っている。

井上の言うと通りで、河野文学の特徴は、特異なテーマを扱いつつも、乱れのない文章で人間の暗部を鋭くえぐり出して、それでいてスマートに描ききるところにある。

『蟹』は、まさにその好例といえるだろう。

また、河野は大庭みな子とともに、女性初の芥川賞選考委員でもある。

それ以外にも「文藝賞」の選考委員も務めた河野は、あの山田詠美なんかも発掘している。

作品について

主人公「悠子」は3年前から結核を患っているが、なかなか快方に向かわない。

そこで転地療養を思い立ち、一か月のあいだ房州で過ごす。

ある日、義弟夫婦が幼い「武」をつれて見舞いにやってきた。

悠子にとって武は甥っ子ということになる。

武は1人で貝殻やらを捕って遊んでいたのだが、せっかく捕まえた蟹を逃がしてしまう。

悠子はその蟹を探すという口実で、武を自分の宿に泊めさせる。

そして2人でひたすら蟹を探しはじめる。

これが『蟹』のあらすじで、一見すれば、和やかな「伯母」と「甥」の交流が描かれているわけだが、その様子はどことなく奇妙だ。

そもそも、祐子はマゾっ気のある女として描かれていて、武に注がれる視線もどこか「幼児愛好」的なものを感じさせる。

言ってしまえば、叔母と甥の「蟹探し」も「児童誘拐」のようでさえあるのだ。

こんな感じで『蟹』は、幼児愛好とは異常性愛を扱った「河野文学」のお家芸的な作品であある。

デビュー作の『幼児刈り』ほどストレートではないにしても、なかなかぶっ飛んだ作品なので、「ちょっと刺激的な純文学を読みたい」という人にオススメだ。

ちなみに、河野文学の中だと、ぼくは『雪』という短編が好き。

雪を見るとパニックを起こしてしまう女性が主人公で、その驚きの原因が徐々に明かされるのだが、ストーリー、プロット、文体、どれをとっても絶妙で、完成度がとても高い

『蟹』『幼児刈り』とあわせて『雪』もぜひ読んで欲しい(ちなみに、すべて下の本に収録されている)。

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『感傷旅行』(田辺聖子)1963年

作者について

田辺聖子は大阪文学学校に通い懸賞小説に応募し続け、同人12名で創刊した「航海」に載せた『感傷旅行』で芥川賞に初ノミネート、そのまま受賞した。

彼女の作品は大阪弁をつかった文体で、夫婦や男女の機微を軽妙にライトにチャーミングに描いたものが多い。

大阪弁を使う作家と言えば、無頼派の「織田作之助」とか、現代だと「町田康」とかいった作家があげられるが、田辺聖子もその系譜に入れていいだろう。

彼女の作品にも、深刻さや重々しさといったものがほとんど見られない。

軽妙で、ユーモラスで、チャーミングで、おもしろおかしい・・・・・・

戦後まもなくの芥川賞を見れば、田辺聖子の作品はやはり新鮮であり、彼女は新しい才能として文学シーンに受け入れられていった。

小説だけでなく、エッセイ、『源氏物語』『枕草子』などの古典の現代語訳など、その活躍シーンも幅広い。

ちなみに田辺は1987年から直木賞の選考委員を務めているが、そのことは彼女の「大衆文学」的な資質を物語っているといえる。

作品について

選考委員の中村光夫は、

「軽薄な世界を軽薄な筆致で描ききった」

同じく選考委員の丹羽文雄は、

「えたいの知れない、ねつこい、何かしら渦巻いているような小説」

と、その独自の世界観を評価した。

だが一方で、永井龍男は、その独自の世界観に抵抗を示している。

「この才筆の中から、なにかの生まれるのを期待してよいか、すでにこの中に独自の世界があるのか、私には判断がつかない」

こんな感じで「新しい」とか「創造的」と評価する声と、「軽薄」とか「マンネリ」と否定する声と、評価は真っ二つに分かれていた。

主人公「有以子」は37歳の放送作家。

恋多き彼女だが、今度の彼氏は共産党員の「野末」という男。

有以子は「今度こそ結婚する」と息巻き、彼の気を引くために『レーニン選集』や『マルクス・エンゲルス集』を読み始める。

そして、にわかマルクスかぶれの彼女の言動といえば、

「唯物論的弁証法が……」とか、

「ブルジョワの搾取と収奪が……」とか

とにかく野末の影響をもろに受けて、一端の革命家を気取りなのである。

そんな有以子の姿が滑稽で面白い、というよりも、なんだか健気で愛おしい。

間違いなくこの作品の魅力は、有以子のチャーミングなキャラクターにあるといっていい。

左翼運動など諸々の小道具は時代を感じさせるのだが、文体を含む雰囲気はまるで現代文学のよう。

深刻さと無縁で、読んでいて「ふふ」っと笑ってしまうような、要するに「おもしろい」作品を読みたいって人にオススメの作品。

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『玩具』(津村節子)1965年

作者について

津村節子は短大時代から少女小説を書いていた。

彼女が参加していた文芸雑誌の編集長を務めていたのが作家の吉村昭で、卒業後に2人は結婚することになる。

その後、津村は2度の「直木賞候補」にノミネートし、更に『さい果て』で芥川賞の候補にノミネート。

37歳の年、『玩具』で第53回芥川賞を受賞した。

ちょうど夫の吉村昭が就職と失業とを繰り返していた頃で、しかも一男一女を育てながらの執筆だった。

ちなみに、受賞作の『玩具』はこの頃の生活を描いた私小説であり、作家として報われない吉村昭の姿も描かれている。

が、そんな吉村も、妻の受賞の翌年に『星への旅』で太宰治賞を受賞。

その後、受賞こそしなかったが芥川賞の候補になり、「純文学」や「歴史小説」を手がける大家となった。

晩年、津村はそんな吉村の死に水を取った。。

彼の遺作短編集『死顔』の後書きは彼女の筆によるのだが、夫への愛情がしみじみとした趣で書かれた名文である。

作品について

選評では、厳しい声も多かった。

  • 石川達三「よく書けているが、それ以上のものがない」
  • 石川淳「この書き方では、小説の世界にならない」

ただ、一方で、こう評価する声もあった。

  • 中村光夫「作品の底に、感情のこまやかさと明晰な理知が流れる」
  • 瀧井孝作「随想風に書いて、これだけ潤いのあるのは良い」

そして丹羽文雄は言う。

「この人の才能には端倪すべからざるものがある」

物語は津村の私小説で、主人公「春子」と夫の「志郎」の交流が描かれいてる。

志郎は生き物を飼うのが好きだけど、春子は生き物が苦手。

なのに志郎は、金魚やら小鳥やらネズミやらを飼って春子を辟易させる。

しかも小説志望の志郎は、狭いアパートの一室で小説を書いているのだが「気が散る」だなんだと文句をつけて、春子に八つ当たりをする。

春子は、志郎の機嫌を損なわないように、つねに神経をすり減らしている。

こんな感じで大きな事件も発展もない物語で、選評にもある通り小説というよりも「随想」といえるかもしれない。

とはいえ、味わいのある文体は好感がもてるし、それに「津村」と「吉村」という作家の生活が垣間見れるという点も興味深い。

時代がら男尊女卑的な旧弊な雰囲気があって、そういう意味では夫に振り回される妻の窮状を描いた「ジェンダー」的な作品といった読みもできる。

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『三匹の蟹』(大庭みな子)1968年

作者について

大庭みな子は津田塾大学英文科を卒業。

結婚後は、夫の仕事の関係でアメリカに移住し、アラスカで過ごした。

小説を書く傍ら、州立大学の美術科で学ぶという芸術家肌の女性である。

在米8年目、38歳の年に『三匹の蟹』で群像新人文学賞を受賞し、そのまま芥川賞も受賞した(丸谷才一との同時受賞)。

この作品は発表当時からすでに評判が高く、選考では厳しい採点になったと言われている。

とはいえ、やはり作品を高く評価する声が多い。

  • 「この作品に見られる文学的資質は相当なもの」
  • 「細部にわたって一つ一つ効果が計算されている」

川端康成は、

「この手の小説を、ここまで形にしたものは、日本ではみられない」

といい「それだけでも芥川賞に値する」と絶賛した。

帰国後、大庭は次々と作品を発表し、谷崎賞や野間賞、川端賞といった権威的な純文学賞を次々と受賞していった。

河野多惠子と女性で初の芥川賞選考委員となったのは、すでに述べた通りだ。

また「群像」主催の対談では、大岡昇平、吉行淳之介、大江健三郎というそうそうたるメンツに混じって参加し、女流作家として世間からの注目を集めた。

作品について

『三匹の蟹』が描くのは、アメリカで暮らす中産階級の女の孤独だ。

アメリカに住む日本人夫婦がパーティを主催するのだが、妻の「由梨」はその準備に追われていた。

パーティーにやってくるのは、文学者、歌手、画家といったアメリカのスノッブたち。

彼らとの交流にホトホト疲れていた由梨は、適当な理由をこしらえて外出してしまう。

そして、夜の遊園地に向かった由梨は、そこで知り合ったチンピラ風の若い男と一晩を過ごす。

「三匹の蟹」とは、2人が泊まった怪しいラブホテルの名前である。

明け方、始発バスに乗って帰ろうとする由梨だったが、財布の中にあった20ドルが、あのチンピラ風の男に盗まれいることに気がつく。

と、こんな感じで、ここで描かれる由梨の姿は、みじめでやるせない

津村節子の『玩具』もそうだが、『三匹の蟹』もまた、夫の都合で振り回される妻の孤独を描いた作品なのだ。

津村や大庭らが描く女性は、皆が孤独や苦しみを抱えていて、なんとか自分自身を取り戻そうとしている。

それは60年代という時代が、女性たちの復権が求められ始めた時代だったということの表れなのかもしれない。

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『年の残り』(丸谷才一)1968年

作者について

丸谷才一が「文学」に果たした功績はめざましく、彼は「文学そのものであった人」とさえ呼ばれた人物である。

東京大学文学部英文科を卒業した丸谷は、國學院大學や東京大学で教鞭を執った。

41歳の時に書いた小説『笹まくら』が河出文化賞を受賞し、2度の芥川賞候補になる。

そして、43歳の時に書いた『年の残り』で第59回芥川賞を受賞する。

こうし書くと やや遅咲きの作家に見えるが、ここまでに彼が果たした業績は大きかった。

学生時代ジェイムズ・ジョイスに影響を受けた丸谷は、名作『ユリシーズ』の翻訳や、文学論でも知られていた。

また国語問題文章論古典論などにも造詣が深く、多方面での活躍を見せていた。

選考委員の石川淳は、

「過去の候補作2作で十分受賞できた」

といった上で、

「今回の作品では、むしろ賞の方が遅れて出た」

「丸谷才一の力量は、ここに定まった」

と評価している。

『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞)は、『源氏物語』の1巻として実在したかもしれない「輝く日の宮」成立の謎をめぐる「文学史小説」で、とにかく面白い。

長い教壇生活をあわせて、実に多くの顔をもつ才子である。

作品について

とある病院で院長をつとめる「上原」は還暦を過ぎた老人だ。

そんな彼のもとに、ある一本の電話がかかってくる。

友人「多比良」が自殺をした、というのだ。

多比良は上原の、旧制中学時代の同級生。

父親の意向で中学を中退させられると、家業の菓子屋を継がされた。

その菓子屋を人気店にのし上げた多比良だったが、彼は「色狂い」の果てに猟銃で頭を撃ち抜いたのだった。

この小説は、晩年を迎えた老人が、友人の自殺をきっかけに「人生」を見つめ直す物語だ。

老年(年の残り)という時代は、まさに別れの連続なのだろう。

この小説を読むと、「みんな死んでいく」という当たり前の事実が、改めて胸に迫ってくる。

そして、人間の苦しみの根幹ともいえる「老、病、死」とは何かを問わずにはいられない。

選考委員の三島由紀夫は、

「人生、老、病、死の不可知を扱っていて、作家としての一つの苦い観点を確保した」

と、この作品を強く推している。

また、大岡昇平も、

「老人の心理がよく描けており、人間の生について、根源的な問いを発している」

とし、同時受賞の大庭みな子の『三匹の蟹』よりも高い評価を示した。

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『赤頭巾ちゃん気をつけて』(庄司薫)1969年

作者について

本名を福田章二。

東京都に生まれ、東京都立日比谷高等学校へと進学する。

同級生には、塩野七生、古井由吉という、重鎮レベルの作家がいる。

庄司薫がデビューした頃というのは、学生運動が盛んな60年代。

その当時、文学好きの周辺では「軟派な庄司薫、硬派な大江健三郎」という分派めいたものが存在していたらしい。

そういう意味では、庄司薫の小説は「よみやすくて、おもしろい」

とはいえ、堂々の芥川賞受賞作。

選考会では、三島由紀夫からも「才気あふれる作品」と絶賛されている。

ただ、文体の「冗長さ」を批判する川端康成のような立場もあった。

もっとも、川端康成は「書きたいことの9割を削る」という、とんでもなく簡潔な文体を目指した作家で、庄司薫の文体とは全くといっていいほど正反対。

川端の評価は「さもありなん」なのである。

ちなみに、

  • 『赤頭巾ちゃん気をつけて』
  • 『白鳥の歌なんて聞こえない』
  • 『さよなら快傑黒頭巾』
  • 『ぼくの大好きな青髭』

以上、『赤』『黒』『白』『青』の4作は、「庄司薫」を主人公にした「薫くん4部作」と言われている。

作品について

時は、学生運動が盛んな60年代。

主人公の「薫」は日比谷高校に通う男子高生。

ツイてない毎日に退屈を感じている。

幼馴染の「由美」と電話するけれど、ささいなことで喧嘩ばかり。

そんな日々を過ごす薫の内面が、軽快な文体でユニークに語られていく。

青春の青臭さや泥臭さっというのは、いつの世も変わらない。

学生運動や、60年代当時の流行や風俗などに疎くても、薫の独白は今の高校生でも共感できるのではないだろうか。

周囲を冷静に眺め、人々の偽りやごまかしを見抜く薫。

「自分はあんな人間になんてならないぞ」自らをいましめる。

が、一方で「じゃあお前は一体どんな人間になりたいのか」そう自分に問うけれど、その答えは見つからない。

自分のことも、世間のことも、薫には何もわからない。

だけど、そんな薫が最後に下した決断。それは、

優しい人間になること

最後の「赤頭巾ちゃん」の登場シーンも、読む人の心を温かくさせると思う。

この本の特徴は「饒舌な文体と少年の思弁という内容」である。

じつはこれ、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』と類似していると指摘され、時に批判の的にされることがある。

だけど、正直どうでも良い。

そんなこと気にならないくらい、面白くて、爽やかで、きれいな作品だと思うからだ。

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