【ハートウォーミング・日常系】おすすめ芥川賞作品 5選 ―中級編①―

芥川賞
「明るい・優しい・温かい」作品を5つ厳選

芥川賞作品の性格は様々だ。

読みやすく面白い作品、テーマが深く哲学的な作品、洗練された文章が魅力な作品などなど。

ここまで主に「芥川賞初心者」の方に向けて読みやすい作品を紹介してきた。

【本当におもしろい】おすすめ芥川賞作品5選 ー初級編①ー

【テーマが深い】おすすめ芥川賞作品5選 ー初級編②ー

ただ、一般的に「純文学」というと、

なんだか取っつきにくいなあ

と、感じる人も多いと思う。

そんな人たちのために、今回は「ハートウォーミング系」の作品を中心に紹介したい。

何気ない日常が尊く愛しく思える、そんな 明るい作品、優しい作品、温かい作品。

数としては多くはないのだが、歴代受賞作の中にもそんな作品はある。

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第5位『ポトスライムの舟』(津村記久子)

自分の人生に水をあげましょう

2008年の受賞作。

大正時代に一世を風靡した文学に「プロレタリア文学」なるものがある。

庶民の過酷な労働環境や生活苦をメインに描き、

「こんなんおかしいだろ!」

と、声高らかに社会の不正を訴える文学だ。

代表的作家には、小林多喜二(『蟹工船』)や、葉山嘉樹(『セメント樽の中の手紙』)がいる。

彼らの目的は、なんといっても不正な社会を正すことと、生活苦をなくすこと。

要するに彼らの文学は“革命の手段”だったわけだ。

さて、津村記久子もまた「労働」とか「生活苦」を描く現代の作家なのだが、かつてのプロレタリア作家みたいにイデオロギッシュでは全然ない

登場人物が社会の不正を訴えたり、会社に噛みついたり、団体交渉をしたりすることは決してない。

彼らは自分に与えられた生活の中で、それでも小さな幸せを探して、けなげに生きようとする。

津村記久子の作品には、そんな一庶民のつましい生活の断片が時に切なく、時に愛らしく、時におかしく描かれているのだ。

第140回芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』もまた、苦しい労働生活の中で、なんとか自分の幸せを探そうとする女性の話だ。

  • 主人公は「ナガセ」という29歳の女性。
  • 前職をパワハラで退職。
  • 現在は工場の契約社員で、2つの副業を掛け持ち。
  • 職場と自宅を往復するだけの毎日にほとほと疲れている。
  • そんなある日、彼女は「世界一周旅行」のポスターを見つける。
  • 費用はナガセの工場での年収と同じ「163万円」
  • 世界一周しようと決断したナガセは、生活をさらに切り詰めていく。

と、あらすじを書くと、やはり心は重くなる。

低賃金とか、重労働とか、パワハラとか、ブラック企業とか。

それは今の時代だって負けていない。

というか、2000年代に比べ、今の方がかえって深刻になってるんじゃないだろうか。

そういう意味でも、本書はきっと現代を生きる若者たちの共感を呼ぶだろう。

タイトルの「ポトスライム」は”幸福の木”

幸福の木に水を上げるのは、他でもない自分自身なのだ。

わずかな救いを見いだせる最後がいい。

芥川賞受賞作の中でも、文章は読みやすいし、ストーリーも分かりやすい

ちなみに、作者の津村記久子自身もパワハラによって仕事を辞めた経験を持っている。

ここまでのリアリティと説得力のある物語を書けたのは、彼女の苦しい体験があったからこそなのだろう。

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第4位『八月の路上に捨てる』(伊藤たかみ)

フリーターの1日を“文学”に

2006年の受賞作。

「2日前の夕食は?」

そう聞かれて、即答できる人は、きっと少ない。

“日常”というのはそういうもので、意識しなければ簡単に忘れ去られていってしまう。

優れた文学というのは、そんな日常のささやかな一コマを切り取って、その唯一性とか一回性とかを表現したものだと僕は思っている。

伊藤たかみの『八月の路上に捨てる』も、その1つの好例だ。

この物語は、あるフリーターの1日を描いている

  • 主人公「敦」の仕事は自販機の補充をすること。
  • 今日“8月31日”が最後の仕事の日
  • 彼は同僚の「水城」とトラックで配送に向かう。
  • その道中で、2人は互いの身の上話をしていく。
  • 敦は、翌日に妻と離婚をすることになっている。
  • 夫婦には一言では言い尽くせない、紆余曲折があった……

物語は「バイト最後の1日」と「夫婦生活の回想」とが交互に語られていく。

彼ら夫婦の間に、大きな事件や劇的な展開があったわけではない。

それでも、彼らは“離婚”という結論に行き着いてしまった。

人間関係なんて、そんなものなのかもしれない。

どんなに些細な幸福を願っても、どこかで生まれた小さな歪が新たな歪を生む。

それらは複雑に絡まりあい、もはや修復不可能なまでになってしまう。

わかり合おうと言葉を尽くしても、それは相手に届かない。

孤独とは1人の時に感じるものとは限らず、むしろ誰かと一緒にいるときこそ強烈な孤独を感じるものなのだろう。

『八月の路上に捨てる』を読んでいると、日常の尊さと儚さとを改めて感じさせられる。

日常は決してあたりまえのことじゃない。

その誰もが知りながら、すぐに忘れてしまう事実を、改めて人々に伝えることも文学の役割ではないだろうか。

選考委員の黒井千次はこんな言葉を残している。

「八月の路上に、紛れもない現代の光景の一つが捉えられている。」

作品で描かれた“フリーターの日常”は、現代人が忘れ去っていく“自らの日常”を表現しているのだろう。

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第3位『感傷旅行』(田辺聖子)

チャーミングな主人公が魅力

1963年の受賞作。

田辺聖子の作品は大阪弁をつかった文体で、夫婦や男女の機微を軽妙にライトにチャーミングに描いたものが多い。

大阪弁を使う作家と言えば、無頼派の「織田作之助」とか、現代だと「町田康」とかいった作家があげられるが、田辺聖子もその系譜に入れていいだろう。

彼女の作品にも、深刻さや重々しさといったものがほとんど見られない。

軽妙で、ユーモラスで、チャーミングで、おもしろおかしい・・・・・・

感傷旅行センチメンタルジャーニーもまさにそんな作品だ。

選考委員の中村光夫は、

「軽薄な世界を軽薄な筆致で描ききった」

同じく選考委員の丹羽文雄は、

「えたいの知れない、ねつこい、何かしら渦巻いているような小説」

と、その独自の世界観を評価した。

だが一方で、永井龍男は、その独自の世界観に抵抗を示している。

「この才筆の中から、なにかの生まれるのを期待してよいか、すでにこの中に独自の世界があるのか、私には判断がつかない」

こんな感じで「新しい」とか「創造的」と評価する声と、「軽薄」とか「マンネリ」と否定する声と、評価は真っ二つに分かれていた。

主人公「有以子」は37歳の放送作家。

恋多き彼女だが、今度の彼氏は共産党員の「野末」という男。

有以子は「今度こそ結婚する」と息巻き、彼の気を引くために『レーニン選集』や『マルクス・エンゲルス集』を読み始める。

そして、にわかマルクスかぶれの彼女の言動といえば、

「唯物論的弁証法が……」とか、

「ブルジョワの搾取と収奪が……」とか

とにかく野末の影響をもろに受けて、一端の革命家を気取りなのである。

そんな有以子の姿が滑稽で面白い、というよりも、なんだか健気で愛おしい。

間違いなくこの作品の魅力は、有以子のチャーミングなキャラクターにあるといっていい。

左翼運動など諸々の小道具は時代を感じさせるのだが、文体を含む雰囲気はまるで現代文学のよう。

深刻さと無縁で、読んでいて「ふふ」っと笑ってしまうような、要するに「おもしろい」作品を読みたいって人にオススメの作品。

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第2位『沖で待つ』(絲山秋子)

心温まる“純文学ファンタジー”

2005年の受賞作。

いつか村上春樹を駆逐する存在になるのではないか。

そう言われるのが、絲山秋子だ。

そんな彼女は作家としては珍しい経歴の持ち主で、大学卒業後は住宅設備機器メーカーの営業職を10年ほどつとめていた。

ところが、1998年に躁鬱病を患って入院。

小説はこの時に書き始めた。

このときの体験を元に、精神病患者たちの姿を描いた『逃亡くそたわけ』は直木賞候補に上がった。

その同年『沖で待つ』第134回芥川賞を受賞した。

これは30代女性による独白体を取る小説だ。

  • 主人公の及川には信頼できる同僚がいた。
  • 牧原太、通称「太っちゃん」
  • 彼女は太っちゃんのためなら「何だってしてやる」と思えるほど、彼を信頼していた。
  • ところが、太っちゃんは死んでしまった。
  • 及川は太っちゃんとのある約束を果たすため、彼の部屋に忍び込む……

絲山秋子の作品は、純文学的でありながら、エンタメ要素がほどよく入った「面白い」ものが多い。

受賞作の『沖で待つ』も、2000年代の受賞作の中で、一際「おもしろい」作品だといえる。

難しさや深刻さとは無縁で、ハートウォーミングでもある。

友人でもない、恋人でもない、「同僚」という仕事を通して生まれた信頼を描いたのも良い

愛着と信頼をよせる同僚の死

そんな彼との間に起こった ほの暖かい奇跡

そして明らかになるタイトル『沖で待つ』の意味……

それらがユーモラスで優しい言葉で描かれていく。

芥川賞作品で「泣ける」作品ってのはあまりないが、『沖で待つ』で不覚にもぼくは泣いてしまった。

心温まる純文学を読みたいという方にオススメの1冊。

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第1位『赤頭巾ちゃん気をつけて』(庄司薫)

軽快で優しい少年の”思弁”

1969年の受賞作。

庄司薫がデビューした頃というのは、学生運動が盛んな60年代。

その当時、文学好きの周辺では「軟派な庄司薫、硬派な大江健三郎」という分派めいたものが存在していたらしい。

そういう意味では、庄司薫の小説は「よみやすくて、おもしろ

とはいえ、堂々の芥川賞受賞作。

選考会では、三島由紀夫からも「才気あふれる作品」と絶賛されている。

物語の舞台は、学生運動が盛んな60年代。

主人公の「薫」は日比谷高校に通う男子高生。

ツイてない毎日に退屈を感じている。

幼馴染の「由美」と電話するけれど、ささいなことで喧嘩ばかり。

そんな日々を過ごす薫の内面が、軽快な文体でユニークに語られていく。

青春の青臭さや泥臭さっというのは、いつの世も変わらない。

学生運動や、60年代当時の流行や風俗などに疎くても、薫の独白は今の高校生でも共感できるのではないだろうか。

周囲を冷静に眺め、人々の偽りやごまかしを見抜く薫。

「自分はあんな人間になんてならないぞ」自らをいましめる。

が、一方で「じゃあお前は一体どんな人間になりたいのか」そう自分に問うけれど、その答えは見つからない。

自分のことも、世間のことも、薫には何もわからない。

だけど、そんな薫が最後に下した決断。それは、

優しい人間になること

最後の「赤頭巾ちゃん」の登場シーンも、読む人の心を温かくさせると思う。

この本の特徴は「饒舌な文体と少年の思弁という内容」である。

じつはこれ、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』と類似していると指摘され、時に批判の的にされることがある。

だけど、正直どうでも良い。

そんなこと気にならないくらい、面白くて、爽やかで、きれいな作品だと思うからだ。

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【 参考記事  芥川賞作家らも注目! Audible(オーディブル)の可能性を徹底解説

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