はじめに「芥川賞」とは
芥川龍之介賞(通称「芥川賞」)は、日本でもっとも有名な文学賞といっても過言ではない。
1935年に芥川龍之介の友人である「菊池寛」によって創設された本賞は、これまでに多くの偉大な作家を輩出してきた。
あの太宰治が欲しくてほしくて仕方なかった本賞だが、小説を書く人であれば、誰しもが受賞を夢見る賞であることは間違いない。
では、芥川賞を受賞するために、具体的にどのようにすればよいのだろうか。
芥川賞の受賞作品が決まるまでには、どのようなプロセスがあるのだろうか。
この記事では、
- 芥川賞にノミネートされる4つの条件
- ノミネートされる4つのパターン
- 芥川賞を取りやすい文芸誌
- 選考のプロセス
これら4つについて徹底解説をしたい。
芥川賞に興味がある方や、新人賞や芥川賞受賞を狙っている方は、ぜひ参考にしていただきたいと思う。
それでは、お時間のある方は最後までお付き合いください。
ノミネートされる“4つ”の条件
芥川賞候補としてノミネートされるためには、次の4つの条件を全て満たしていなければならない。
- 広義の純文学作品であること
- 新人作家による作品であること
- 過去半年に雑誌、同人誌に発表された作品であること
- 短編および中編の作品であること
以下では、この4つについて、1つ1つ詳しく説明していきたい。
広義の純文学作品であること
正直いえば、これがもっとも曖昧な点だといえる。
というのも、そもそも「純文学」の定義というのが極めて曖昧で、作家・評論家らの中でも意見がバラバラだからだ。
そうはいっても、「純文学」と「エンタメ小説」との間には、やっぱり何かしらの“境界”は存在している。
ということで、「純文学とは何か」にあえて答えれば
「文学・芸術・哲学についての深い思索・探求」が描かれている作品
ということになるだろう。
もちろん、これだけでは「純文学」の定義としては全く弱いので、もっと知りたい方は以下の記事を参考にしていただきたい。【 参考記事 【純文学とエンタメ小説(大衆文学)の違い】を分かりやすく解説 】
とにかく、芥川賞候補になるためには、
「文学ってなに?」
「美ってなに?」
「世界って何?」
こうした問いを内包する作品である必要がある。
新人作家による作品であること
「純文学とは何か」ほどではないが、実はこれもまた曖昧な点だと言える。
なぜなら、芥川賞における「新人」の定義も曖昧で、芥川賞の歴史において何度も何度も議論されてきたからだ。
とはいえ、芥川賞における過去の状況を踏まえて言えることはある。それは、
「デビュー後 10年程度」までなら芥川賞受賞はありうる
ということだろう。
たとえば、2010年に作家デビューした今村夏子は、9年後の2019年に『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞しているし、2003年に作家デビューした村田紗耶香は、13年後の2016年に『コンビニ人間』で芥川賞を受賞している。
しかも、受賞時、この2人の作家の実績はめざましく、どちらも「野間文芸新人賞」と「三島由紀夫賞」を受賞していた。
つまり、2人は、中堅作家に片足を突っ込んだ状態で芥川賞を受賞しているワケだ。
逆に、何度もノミネートされながら、とうとう芥川賞を取れなかった作家の一人に、山崎ナオコ―ラがいる。
彼女は今も活躍する人気作家であり、芥川賞の候補に通算で5回もノミネートされている。
最後のノミネートはデビュー後12年のことで、そこで受賞を逃した彼女は、ついに芥川賞は取れずじまいとなってしまった。
こうしてみてみると、「受賞後10年程度」というのが「新人」と「中堅」のボーダーラインと考えてよさそうだ。
とはいえ、受賞者の多くは「デビュー後 5年以内」には受賞していることを考えれば、上記はあくまでも「デッドライン」であり、かなりのレアケースだと考えた方がよさそうだ。
雑誌、同人誌に発表された作品であること
芥川賞候補になるためには、過去半年に「雑誌」や「同人誌」に発表された作品である必要がある。
だけど、もちろん、どんな雑誌・同人誌でもいいわけではない。
これまでの芥川賞を振り返れば、おおむね次の5つの文芸誌にしぼることができる。
- 『新潮』(新潮社)
- 『文藝』(河出書房社)
- 『文學界』(文藝春秋)
- 『群像』(講談社)
- 『すばる』(集英社)
これらは、いわゆる「5大文芸誌」と呼ばれているもので、主に「純文学作品」を掲載する雑誌として有名だ。
毎年の芥川賞候補作品は、基本的にこの5つのどれかに発表された作品が大半をしめる。
ただ、年によっては、その他の文芸誌からの選出もあるにはある。
たとえば、2012年に受賞した『abさんご』(黒田夏子)は『早稲田文学』で、2019年に受賞した『むらさきのスカートの女(今村夏子)は『小説トリッパー』で発表された作品だ。
そのほか「候補作品」も含めれば、『太宰治賞作品集』や『たべるのがおそい』などが挙げられる。
ただし、こうした「5大文芸誌」以外から作品がノミネートされるのは、およそ「5年に1度あるかないか」といった確率なので、基本的には「候補作品は5大文芸誌に掲載された作品から選ばれる」と考えてもらえればよい。
短編および中編の作品であること
短編・中編小説と一口にいっても、具体的にどれくらいの文量なのだろう。
これも例によって明確な定義はないわけだが、過去の候補作品を踏まえると、およそ次の通り。
短編小説 …50枚~100枚(400字詰原稿) …10,000字~30,000字程度
中編小説 …100枚~300枚(400字詰原稿) …30,000字~100,000字程度
一昔前の芥川賞であれば、100枚以内の短編の受賞は珍しくなかったし、中には50枚程度の作品が受賞したこともあった。
ただ、近年の傾向を見てみると、短編での受賞は珍しくなってきている。
2010年代以降は ほぼ全ての受賞作品が中編小説であり、枚数はザっと150枚~250枚程度あたりとなっている。
さて、以下は あくまでも僕の憶測として読んでもらいたい。
150枚~250枚というのは、受賞作品1つで単行本化できるギリギリの文量である。
実際、近年の芥川賞作品は、それ1作だけで単行本として刊行されている。
そのことを考えると、中編ばかりが受賞する背景には、ひょっとしたら出版社側の商業的な思惑が影響しているのかもしれない。
もっとも、選考委員たちには そうした商業的な打算は一切ないだろうから、選考会時点ではなく 候補作品にしぼる時点で 短編が除外される傾向にあるのだろう。
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“5大文芸誌”に作品を発表するには
芥川賞候補にノミネートされるために、主に“5大文芸誌”に作品を発表する必要がある。
では、まだ作品を世に出したことのない人間は、どうすれば“5大文芸誌”に作品を発表できるのか。
過去の状況を見ると、次の4パターンが挙げられる。
- 純文学系の新人賞を受賞する
- 著名人になる
- 出版社に売り込む
- 同人誌に優れた作品を投稿する
最初に言っておくと、この4パターンのうち、もっとも現実的なのが1の「純文学系の新人賞を受賞する」ことだ。
とはいえ、過去の状況を見てみると、2~4のパターンも少なからずあるので無視はできない。
以下では、この4つについて、1つ1つ詳しく説明していきたい。
純文学系の新人賞を受賞する
芥川賞作家の多くが、このパターンだ。
ここでいう「新人賞」というのは、次の5つと考えてよい。
- 新潮新人賞(『新潮』)
- 文藝賞(『文藝』)
- 文學界新人賞(『文學界』)
- 群像新人文学賞(『群像』)
- すばる文学賞(『すばる』)
そう、つまり、“5大文芸誌”が主催する新人賞(以下、5大新人賞)だ。
【 参考記事 まとめ【純文学新人賞】の傾向と特徴―どこに応募すべきかを徹底解説!― 】
新人賞受賞後は、主に次の2パターンに分かれる。
- 新人賞受賞 → その作品で芥川賞受賞(レアパターン)
- 新人賞受賞 → その後、他作品で芥川賞受賞(王道パターン)
まず、“5大新人賞”を受賞すれば、その受賞作品が当該文芸誌に掲載されるので、そのまま芥川賞候補としてノミネートされる可能性が生まれる。
こうして受賞した作品には、たとえば、次のような作品が挙げられる。
- 2017年『影裏』(沼田真佑)=文學界新人賞受賞作
- 2017年『百年泥』(石井遊佳)=新潮新人賞受賞作
- 2017年『「おらおらでひとりいぐも」』(若竹千佐子)=文藝賞受賞作
- 2021年『貝に続く場所にて』(石沢麻依)=群像新人文学賞受賞作
とはいえ、こんな風にストレートに芥川賞を受賞するのは珍しく、多くは次の流れをたどることとなる。
【新人賞受賞でデビュー】
↓
【文芸誌から執筆を依頼】
↓
【文芸誌に作品を発表】
↓
【芥川賞候補にノミネート】
↓
【芥川賞受賞】
芥川賞受賞者全体で、上記の割合はザっと8割といったところなので、芥川賞受賞を目指すのなら、この王道パターンを狙う必要がある。
したがって、デビュー後も優れた純文学作品を発表し続ける必要があるということだ。
ちなみに、2012年『abさんご」(黒田夏子)=早稲田文学新人賞受賞作、のように“5大新人賞”以外の新人賞を受賞し、そのまま芥川賞受賞をとった例もある。
とはいえ、これは数十年に1度のレベルで珍しい例だ。
著名人になる
あまり現実的なコースとはいえないが、
【著名人になる】
↓
【文芸誌から執筆を依頼】
↓
【文芸誌に作品を発表】
↓
【芥川賞にノミネート】
↓
【芥川賞受賞】
というコースは、今や決して珍しいものではなくなっている。
著名人が芥川賞を受賞した初めてのケースは、1977年の池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』である。( 池田はヴェネチアの国際コンクールで大賞を受賞した、著名な美術家だった )
こうした例は、1980年代~1990年代にかけて増え始めて、2000年以降は各界の著名人が頻繁に芥川賞候補にノミネートされるようになっている。
近年で、著名人が芥川賞を受賞した例として、
- 2000年『きれぎれ』町田康(パンクミュージシャン)
- 2000年『熊の敷石』堀江敏幸(フランス文学者)
- 2007年『乳と卵』川上未映子(歌手)
- 2015年『火花』又吉直樹(お笑い芸人)
- 2016年『異類婚姻譚』本谷有希子(女優・劇作家)
- 2016年『しんせかい』山下 澄人(俳優・劇作家)
といった面々を上げることができ、そこには町田康や、堀江敏幸、川上未映子といった、現代の文学界における“重鎮”レベルの作家も含まれている。
また、芥川賞候補にノミネートされ、受賞を逃してしまった例としては、
- 2018年『平成くん、さようなら』古市憲寿(社会学者)
- 2019年『デッドライン』千葉雅也(哲学者)
- 2020年『母影』尾崎世界観(ロックミュージシャン)
- 2022年『ギフテッド』鈴木涼美(元AV女優・コラムニスト)
といった面々を上げることができる。
こうして見渡してみると、特に2010年代以降は、著名人による受賞・ノミネートが一挙に増えだしたということが分かる。
さて、「著名人が新人賞を受賞せず、芥川賞にノミネートされる」、これについては、賛否が大きく分かれる部分ではある。
こうした「著名人の芥川賞参入」の背景には様々な要因があるのだろうが、間違いなく純文学をとりまく“不況”や“逆境”があるのだ、と僕は考えている。
これらの作品を読んでみると、
「これで一般人の作品だったら、間違いなく候補にはあがっていないな」
と感じてしまう“ウーン”作品があるワケだが、その一方で町田康、堀江敏行、川上未映子といった優れた作家を発掘しているのは無視できない事実である。
また、世間の“純文学離れ”が深刻になっている中で、
「有名人が芥川賞? じゃあ、ちょっと読んでみようかな」
と、普段は文学に興味を持たない読者の注意を引くこともできる。(又吉の『火花』は多くの人たちを純文学に興味を持たせた点で、その功績は計り知れないと僕は考えている)
とにかく、様々な意見があるワケだが、著名人で一定の文章力があれば、芥川賞を受賞する可能性が生まれてくるということだ。
なお、改めていうまでもないが、そもそも「著名人になる」ためには、優れた才能がなければ無理なわけなので、
「ふん、門外漢が芥川賞だと? 文学をなめるな!」
などと、(かつての僕のように)頭ごなしに彼らの作品を否定してはいけない。
出版社に売り込む
「自分の作品をプロの編集者に見てもらいたい!」
小説を書く人なら、一度は考えたことがあると思う。
実は、世の中にある「新人賞」というのは、そういう人たちのための、いわば「交通整理」みたいなものだ。
要するに、出版社に際限なく作品が送られないように、
「ちゃんと作品を読む機会を設けるから、それ以外のタイミングで作品を送らないでね」
という本音が、新人賞にはあるのだ。
そんな中、作品を直接出版社に売り込み、「文芸誌」に掲載され、まんまと芥川賞を受賞した作家が過去にいる。
それは平野啓一郎だ。
デビューのいきさつは、こうだ。
当時の平野が新潮社に手紙と作品を送る。
それを読んだ編集長が感動。
すぐに掲載を決め、無名の一般人の作品が全文掲載されることになる。
それが『日蝕』だった。
要するに、彼のデビュー作は新人賞を経由せずに、「飛び級」よろしく文芸誌に掲載されたのである。
そして、その作品がそのまま芥川賞を受賞。
選考委員も「近代小説の正統」との評価を与え、その完成度について ほぼすべての選考委員が認めるほど。
ちなみに受賞時の平野は23歳。
これは大江健三郎と並ぶ当時の最年少記録であり、大学生の受賞については史上4人目。
こうして、平野は「三島由紀夫」の再来とまで言われ、華々しく芥川賞作家としてデビューをしたのだった。
……とはいえ、こんな例は、芥川賞の歴史において唯一無二の例だ。
作品自体はとんでもなく難解で、ペダンチックで、読者をかたくなに拒絶するような、そんなマッチョな作品である。
そうした作風も珍しかったと思うし、おそらく、“現役京大生”というステータスも大きく影響をしていると僕は邪推している。
なので、もしも、出版社側が「おっ?」と思うような特異なステータスがあるのなら、一か八かで出版社に作品を売り込むのも手かもしれない。
同人誌に優れた作品を投稿する
この記事を読んでいる方にも、同人誌で作品を発表している人も多いと思う。
芥川賞を受賞した作家の中にも、同人誌で作品を発表していた作家も珍しくない。
ただ、そうした活動が、芥川賞に結びついたという例は皆無に近い。
唯一の例外は、西村賢太だといえる。
西村賢太は2003年夏、同人雑誌『煉瓦』に参加して小説を書き始める。
2004年、『煉瓦』に発表した「けがれなき酒のへど」が編集者の目に留まり、『文學界』に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出される。
これがきっかけとなり、『文學界』や『群像』で作品を発表。
そして2011年、『新潮』に発表した『苦役列車』で芥川賞を受賞した。
ここで気になるのは、
「同人誌『煉瓦』とは、一体、どんな同人誌だったのか」
「どのように『文學界』に作品が転載されたか」
である。
まず、同人誌『煉瓦』は、1982年に創刊され2007年まで運営された同人誌である。
そして、「文學界」では「同人誌雑評」というコーナー設け、毎月全国各地から同人誌を多く募り、その中の小説・評論を評するとともに、優秀作を半年に1度、転載していた。
創刊以降、『煉瓦』に掲載された作品の多くが、この「同人誌雑評」のコーナーで言及されていて、『煉瓦』はいわば“常連雑誌”であった。
残念ながら、『煉瓦』はすでに廃刊となっているし、しかも、この『文學界』の「同人誌雑評」のコーナーも、その長い歴史に幕閉じてしまっている。
【 参考HP https://prizesworld.com/doujinshi/ 】
ただ、その精神を引き継ぐ形で、『三田文学』が「新同人雑評」なるものを行っている。
【 参考HP https://prizesworld.com/doujinshi/reprinted/bungakukai.htm 】
芥川賞を取りやすい文芸誌
では、芥川賞を取りやすい文芸誌はあるのだろうか。
もちろん、それについて明言することはできない。
ただ、少なくとも過去のデータを見てみると「受賞回数が多い文芸誌」というものがあることが分かる。
過去の受賞データを分析
まず、2013年~2022年の「過去10年」のデータを元に、各文芸誌の「芥川賞掲載回数」をランキングにしたのが次のデータである。
こうしてみると、文學界が№1で、その後を新潮と群像が追いかける形であることが分かるだろう。
ここで、集計データを「2012年以前」へとさかのぼってみると、文學界、新潮の2誌の受賞回数がさらに多くなっていく。
文學界、新潮、この2誌の特徴として、「近代文学」の雰囲気がある、いわゆる「正統的」な小説を多く掲載する点があげられる。
【 参考記事 文學界新人賞(文藝春秋)の傾向と特徴を解説 】
【 参考記事 新潮新人賞(新潮社)の傾向・特徴・受賞作を解説 】
つまり、これまでの芥川賞は「正当派の純文学作品」が受賞する傾向にあったといっていい。
ところが、2018年~2022年(下半期)の、「直近5年」のデータを拾ってみると、興味深い結果を得ることができる。
ここから分かること、それは、
近年、群像と文藝からの芥川賞受賞が増えている
ということだ。
ここで、群像、文藝、これら2誌の特徴を簡単に紹介すると、
群像・・・個性的・前衛的な作品が多い
文藝・・・個性的・エンタメ的な作品が多い
こんな感じになる。
【 参考記事 群像新人文学賞(講談社)の傾向・特徴・受賞作を解説 】
【 参考記事 文藝賞(河出書房新社)の傾向・特徴・受賞作を解説 】
とすると、近年の芥川賞の受賞傾向として、
「正当派」から「個性派」へとシフトしてきている
こんなことが言えそうだ。
もちろん、この5年の受賞作品の中には、
- 『送り火』高橋弘希
- 『背高泡立草』古川真人
- 『ブラックボックス』砂川文次
といった、写実的な手法を採用した「近代文学的な作品」もある。
ただ、その一方で、
- 『むらさきのスカートの女』今村夏子
- 『1R1分34秒』町屋良平
- 『破局』遠野遙
- 『推し、燃ゆ』宇佐見りん
- 『貝に続く場所にて』石沢麻依
- 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子
といった「独特な発想を持つ作品」や、「個性的な作品」の受賞の方が圧倒的に多い。
ということで、近年の芥川賞では、他の作品にはない「とがった個性」が大きく評価されるといえる。
そして、近年で そんな作品を多く掲載している文芸誌は『群像』『文藝』この2誌であると僕は考えている。
実際、近年の2誌の勢いは凄まじく、
- 2020年上・・・『破局』文藝より
- 2020下・・・『推し、燃ゆ』文藝より
- 2021上・・・『貝に続く場所にて』群像より
- 2021下・・・『ブラックボックス』群像より
- 2022年上・・・『おいしいごはんが食べられますように』群像より
- 2022年下・・・『この世の喜びよ』群像より
といった具合に、受賞作品を連続して輩出している。
群像・文藝が強い/すばるが低迷
以上を踏まえ「芥川賞を取りやすい文芸誌」については、
これまで・・・・・・文學界・新潮が強かった(事実) これから・・・・・・群像・文藝が強くなっていく(予測)
と、こんな風にいえるかもしれない。
それから1つだけ。
なんといっても、残念なのは『すばる』である。
過去のデータを見てみると、この1誌だけ、芥川賞掲載回数が群を抜いて少ない。
確かに、これまでの『すばる』は「エンタメ色の強い」作品を掲載することが多かったので、芥川賞に弱かったのは事実だと思う。
【 参考記事 すばる文学賞(集英社)の傾向・特徴・受賞作を解説 】
ただ、最近の『すばる』は、かなり純文学的にレベルの高い作品を掲載している。
芥川賞の傾向そのものが「ライト」になってきていることを考えれば、『すばる』の躍進だって十分あり得る。
ということで、僕は個人的に、今後の『すばる』の活躍を期待している
選考方法や選考会の様子
最後に芥川賞はいつ、どのようにして受賞が決まるのかを簡単に確認しておきたい。
受賞が決まる時期
芥川賞は1年に2度(上半期/下半期)行われている。
【 上半期 】 選考時期…6月に候補作品発表され、7月に選考会が行われ、同日受賞作が発表される。 対象作品…前年12月から5月までに刊行された雑誌・書籍が対象。
【 下半期 】 選考時期…12月に候補作品発表され、翌年1月に選考会が行われ、同日受賞作が発表される。 対象作品…6月から11月までに刊行された雑誌・書籍が対象。
受賞作は『文藝春秋』に、講評とともに全文が掲載される。
なお、
- 上半期受賞作が掲載されるのは9月号(8月発売)
- 下半期受賞作が掲載されるのは3月号(2月発売)
となっている。
選考のプロセス
芥川賞が決定するまでのプロセスは以下の通り。
【 候補作品を決定 】
まず、歴代の受賞者、文芸評論家、マスコミ関係者ら350人へのアンケートを実施する。
その結果を参考に、芥川賞の事務局が60~70作品を選ぶ。
今度はそれらの作品を、文藝春秋の社員約20名が下読みをする。
社員は5人ずつ4つのグループに分かれて作品内容について議論をし、5~7作品の最終候補を選出する。
評価の仕方は、本選と同様で“点数制”となっている。(〇=1点、△=0.5点、×=0点)
【 選考委員による合議 】
選考会は築地の料亭・新喜楽1階の座敷で行なわれる。(並行して、直木賞が2階で行われる。)
選考会の司会は『文藝春秋』編集長が務める。
選考委員は、過去の芥川賞受賞作家を中心に9名からなっている。
事前に、各候補作品に点数をつけておき(〇=1点、△=0.5点、×=0点)、それを披露した上で合議し、受賞作品を決定する。
1作品にしぼれなければ「2作品受賞」になることも珍しくない。
逆に、適当な作品がなければ「受賞作なし」になることもある。(が、近年ではほとんどない)
ちなみに、選考委員に任期はなく本人の意志次第でいつまでも続けることができるため、作品の受賞傾向に偏りが出てしまうことがしばしば批判される。(ちなみに、世界の有名な文学賞では選考委員が頻繁に変わるのが通例となっている)
以上、芥川賞にノミネートされる4つの条件と、ノミネートされる4つのパターン、芥川賞を取りやすい文芸誌、そして、選考のプロセスについてまとめてきました。
芥川賞に興味がある方や、新人賞や芥川賞受賞を狙っている方は、ぜひ参考にしていただければと思います。
最後までお付き合いいただき ありがとうございました。
すき間時間で”芥川賞”を聴く
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たとえば以下のような作品が、”聴き放題”の対象となっている。
『推し、燃ゆ』(宇佐見りん)や、『むらさきのスカートの女』(今村夏子)や、『おいしいご飯が食べられますように』(高瀬隼子) を始めとした人気芥川賞作品は、ほとんど読み放題の対象となっている。
しかも、芥川賞作品に限らず、川上未映子や平野啓一郎などの純文学作品や、伊坂幸太郎や森見登美彦などのエンタメ小説の品揃えも充実している。
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