文藝賞(河出書房新社)の傾向・特徴・受賞作を解説 —作家志望の人は対策を!—

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はじめに「純文学の新人賞」

純文学とは、明治以降に始まった日本の「近代文学」の伝統を大きく組んだ文学ジャンルで、作者による「“芸術”や“哲学”についての深い思索・探求」が描かれているのが大きな特徴だ。

【 参考記事 【純文学とエンタメ小説の違い】を分かりやすく解説―主な文学賞や文芸誌も整理―

そんな純文学をメインで取り扱う雑誌がある。

いわゆる「文芸誌」と呼ばれるのがそれで、中でも有名な「5大文芸誌」というものがある。

【 5大文芸誌 】

・『新潮』(新潮社)

・『文藝』(河出書房社)

・『文學界』(文藝春秋)

・『群像』(講談社)

・『すばる』(集英社)

これら文芸誌にはそれぞれ、優れた「新人作家」を発掘すべく、年に1度の「公募の新人賞」が設けられている。

【 純文学の5大新人賞 】

・新潮新人賞(新潮社)

・文藝賞(河出書房社)

・文學界新人賞(文藝春秋)

・群像新人文学賞(講談社)

・すばる文学賞(集英社)

それぞれの賞には、それぞれの賞の“色”というものがあるので、たとえば、「純文学を書いて、小説を応募してみたい!」という思いがある人は、各賞の傾向や特徴を把握しておく必要がある

ということで、今回は「文藝賞」(河出書房新社)について解説をしてみたい。

記事では主に「賞の概要」「賞の特徴と傾向」「代表的な受賞作」についてまとめていく。

また、最後に作品を書く上での「効果的な対策方法」と、その「おすすめサービス」について紹介するので、ぜひ参考にしていただければと思う。

参考までに、恥ずかしながら僕の「執筆経歴」については(ぱっとしないけど)以下に挙げておく。

【 出版経験 】

・地方文学賞受賞
地方限定出版

・地方新聞文学賞受賞
→ 地方新聞に作品が掲載
kindleで自費出版

・某小説投稿サイトで優秀賞受賞
某アンソロジー企画に参加
大手出版社より出版

【 新人賞における戦績 】

・オール読物新人賞 → 二次選考進出

・すばる文学賞 → 二次選考進出

・小説野性時代新人賞 → 二次選考進出

・小説すばる新人賞 → 二次選考進出

では、どうぞ、最後までお付き合いください。

まずは概要を確認!

詳しい説明に入る前に、まずは「賞の概要」について以下に整理しておく。

文藝賞のHPはこちら

 出版社 河出書房新社
 賞金 50万+記念品
 枚数 100~400枚以内
 (400字詰原稿用紙) 
 応募総数 毎年1800~2300編程度 
 応募締め切り  毎年3月末日
発表 冬季号
 主な受賞者 綿矢りさ(2001年)
 磯崎健一郎(2007年)
 宇佐見りん(2019年)など 
その他 受賞作は高確率で単行本化
\ 格安で自費出版したい方は必見‼ /

特徴①“超豪華”な歴代受賞者たち

文藝賞の歴史は長く、1962年に第1回が行われて以降、数々の有名作家を輩出してきた。その第1回は高橋和巳『悲の器』というゴリゴリの純文学だったのが、近年はライトで取っつきやすい作品が受賞する傾向にあるようだ。

そのラインナップを眺めてみると、そのそうそうたる顔ぶれに驚く。

  • 山田詠美『ベッドタイムアイズ』(1985年)
  • 綿矢りさ『インストール』(2001年)
  • 羽田圭介『黒冷水』(2003)
  • 町屋良平『青が破れる』(2016年)
  • 宇佐見りん『かか』(2019年)
  • 遠野遥『改良』(2019年)

「山田詠美」といえば、純文学もエンタメもどっちもイケる大御所だし、「綿矢りさ」「羽田圭介」なんて授賞当時高校2年生という早熟の天才だし、「町屋良平」は独特の言語感覚を持つ新進気鋭の現代作家だし、なんといっても同時授賞の「宇佐実りん」「遠野遙」は『文藝』の名を改めて世に知らしめた立役者だと言える。

・・・・・・いやはや、改めて凄い。

その他にも、

  • 山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』、
  • 白岩玄『野豚をプロデュース』、
  • 青山七恵『窓の灯』、
  • 若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』など、

映画化やドラマ化された作品や、後の芥川賞作家の授賞が見られる。

以上のことから、『文芸賞』は、今もっとも(商業的に)勢いのある純文学新人賞だと思う。

特徴②“売れそうな作品”が求められる

「売れそうな作品」という見出しが露骨過ぎるのだけど、僕がそう考えるのには理由がある。

作品の規定枚数が「最大400枚」というのが、この賞の大きな特徴の一つなのだが、ここから分かるのは『文藝』が「長編が書ける新人」を求めているということだ。

そして、受賞作が高確率で単行本化するというのも「文藝賞」の特徴だ。

ちなみに、他に高確率で単行本化してくれる新人賞に「すばる文学賞」もある。

【 参考記事 すばる文学賞(集英社)の傾向・特徴・受賞作を解説

それ以外の『新潮新人賞』も『文學界新人賞』も『群像新人賞』も「受賞しても単行本化されない」なんてことが結構あるようだ。

こうした事情から言えること、それは、

『文藝賞』を授賞するには、「売れそうな中・長編小説」を書かなくてはいけない

ということだ。

単行本化が決まっている以上、商業的に「コケる」ワケにはいかない。

たとえば、

「芸術的には素晴らしい! だけど読者に理解されなそう・・・・・・」

と、出版側が判断した場合、他の新人賞であれば単行本化を見送ることできるが、文藝賞ではそうはいかない。

やはり、単行本化するからには、それなりの採算が求められるワケだ。

ということで、文藝賞には「売れそうな作品」という条件が大前提としてあるように僕は思っている。

そして実際に過去の受賞作を読んで見ると、『文學界』とか『新潮』とかとは毛色の違う作品が散見される。

  • おもしろい作品
  • エンタメっぽい作品
  • 若い作者による作品
  • 高齢な作者による作品

要するに「話題になりやすい作品」というのが多い印象を受ける。

では、それらの作品にはどのような特徴や傾向があるのだろうか。

特徴③“新しい感性”が求められる

文藝賞の受賞作の特徴や傾向の1つに「新たな感性」が求められている点が挙げられる。

ここで急いで強調しておきたいのは、“新しい感性”というのは何も「年齢が若い」とイコールではないということだ。

確かに文藝賞の受賞者の中には、現役高校生とか大学生がちらほら見られるが、そこは別に本質ではない。

大切なのは発想の新しさとか、手法の新しさとか、テーマの新しさとか、とにかく何かしらの“新鮮さ”があることだろう。

たとえば綿矢りさの『インストール』(2003年)は“不登校”というテーマを扱いつつ、インターネットやチャットといった、当時の若者の文化を巧く作品に取り込み、女子高生の生の声を「完璧な日本語」(高橋源一郎 談)で表現していた。

また、町屋良平の『青が破れる』(2016年)は、ひらがなをベースにした詩のような文体が印象的で、しかもわずか112ページの小説の中で「3人の身近なキャラ」を死なせるという暴挙をやってのけた点も、選考委員らを驚かせた。

あとは、宇佐見りんの『かか』(2019年)は、「かか弁」という独自の文体をあみだし、母娘の苦悩を鮮烈に描いていた。

選考委員からも大絶賛された宇佐見りんの授賞は、まさしく「新たな感性の登場」を世間に知らしめた1つの事件であり、僕も一読してその才能に驚かされた。

個人的には、なぜ『かか』で芥川賞を取れなかったのかが不思議でならない。( 『推し、燃ゆ』もスゴいけど、『かか』の方が全然スゴい!)

特徴④“程よいエンタメ性”が求められる

最後に、文藝賞の受賞作の特徴として「ほどよいエンタメ性」をあげたい。

この点については、その作家の顔ぶれを見ればある程度理解していただけると思うのだけど、「純文学」も「エンタメ」も、どっちもイケます! という作家が多い。

それを象徴するのは、山田詠美の存在で、彼女は「文藝賞」でデビューし芥川賞に何度かノミネートされたが受賞を逃し、その後、直木賞を受賞した希有な作家だ。

彼女以外にも、山崎ナオコーラ中村航青山七恵綿矢りさ羽田圭介といった作家たちがいて、彼らの作品にもほどよい“エンタメ感”があるといって良い。

こうした特徴は、「文學界新人賞」や「新潮新人賞」なんかと比較すると分かりやすい。

この2賞は「硬質な文章」や「芸術的な表現」が評価されたり、いわゆる「近代文学」っぽい“正当派”の受賞がしたりと、オーソドックスな作品の授賞が目立つ。
【参考記事 文學界新人賞(文藝春秋)の傾向特徴・受賞作を解説  】

【参考記事 新潮新人賞(新潮社)の傾向・特徴・受賞作を解説

その一方で、「文藝賞」の受賞作品にはライトで取っつきやすい作品が多く、Amazonレビューなんかでも「読みやすい」とか「おもしろい」と評価されている作品が多い。

もちろん「おもしろい」とか「よみやすい」だけでは、授賞することはできない。

あくまでも「確かな文体」や「緻密なプロット」といった“基礎”があることが前提となるわけだが、そこに「程よいエンタメ性」や、先述した「新しい感性」が加わると「文藝賞」に求められている作品に授賞に近づくのではないだろうか。

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オススメ作品3選

僕は新人賞への応募に際して、とにかく受賞作や選考委員の作品を読みあさった。(オススメの方法については後述する)

すると次第に賞の傾向や特徴、選考委員にウケそうな要素というもの見えてきて、具体的な対策を練れるようになっていった。

それに、自分の作品と相性がいい賞というのが必ずあるので、「受賞作を分析する」というのは絶対にしておいた方がいいと思う。

ここからは、文藝賞受賞作から「新しい感性」が光る3作品を厳選して紹介したい。

作者はすべて後の芥川賞作家でもあり、そのデビュー作はどれも読み応えのあるものばかり。

特に、「文藝賞」への応募を考えている人は、是非その対策に役立てていただければと思う

『黒冷水』(羽田圭介)

「家庭内ストーキング」なるものを描いた作品で、互いに憎み合う兄弟が、とにかく嫌がらせの応酬を繰り広げる。

正直いって、文章はまだまだ拙いところがあるのだけど、勢いや熱量がスゴくて読む手が全く止まらない

“エンタメ”小説といってもおかしくない雰囲気だが、テーマが決して万人受けしなさそうなところが“純文学”っぽいか(笑)

とはいえ、作者による企みがしっかり効いていて、どんでん返しがあったりと、プロットも丁寧に練られている。

総じて「おもしろい純文学」の良い例だといえる。

作者羽田圭介は

「応募前に過去の受賞作を読みまくって対策をした」

と、あるインタビューで語っている。

そういう意味でも本書は「文藝賞」の傾向や特徴を理解する上で参考になると思われる。

『青が破れる』(町屋良平)

ボクサーになりたいのに、才能がない主人公「秋吉」の内面を中心に描く青春小説

驚くべきは「112ページ足らず」の小説世界で、3人の主要人物を死なせてしまったことと、それを見事に成功させてしまったこと。

描かれる感情・心理もその文脈も一般的な感覚を超えていて、藤沢周、保坂和志、町田康ら選考委員から絶大な評価を得たようだ。

だけど、この作品の最大の特徴はその「文体」にあるといっていい。

ひらがな表記をベースにしてた感覚的な文体は、読み手の心に染み入るような不思議な味わいがある。

どちらかというと、散文詩に近く、そういう意味では「文章の芸術」といった趣の作品だ。

「作中で3人死なせる」という暴挙は絶対にマネしない方がいいと思うけど、文体は大いに参考になると思う。

『かか』(宇佐見りん)

――うーちゃん、19歳。
母(かか)も自分も、もう抱えきれん。――

ここ近年の「文藝賞」の中では、1番の傑作だと思う。

ご存知『推し、燃ゆ』の作者宇佐見りんのデビュー作『かか』は、『推し、燃ゆ』よりもはるかに優れた作品だと断言できる。

何度も言うけど、なぜこの作品で芥川賞授賞しなかったのか、僕は不思議でならない。(ノミネートすらされていないし)

仮にこれから何十年死ぬ気で努力をしたとしても、僕には絶対にこんな文章は書けない。

それを若干19歳にして書き上げたなんて。

宇佐見りんは文学的な奇跡、というか、バケモノだ。

彼女には世界を解釈しよう、語ろうという意図などなくて、世界の方から彼女に流れ込み、彼女はただそれを語らされているのではないか。

そんな想像を弄するぐらい、この作品は神がかっている

異次元過ぎて「文藝賞」に応募する上でどれだけ参考になるかは分からないけれど、応募を検討しているなら一読するべき作品だと思う。

最新の受賞作(2021年~2022年)

2021年『眼球達磨式』(澤大知)

監視社会を舞台にしたSF小説。

主人公「彼」は、職場と自宅を往復するだけの無為な日々を過ごしている。

そんなある日、「彼」はラジコン式の監視カメラ「アイ」を手に入れる。

人目につかず地面を自在に疾走する極小眼球型のアイ。

しかし、ある日、アイはコントロールを失ってしまい・・・・・・といった内容の小説。

情報化社会や、監視社会を風刺した内容で、現代文学のテーマとしてはまぁよくあるモノなのだけど、緻密で正確な描写は受賞作に相応しい

前半は面白く、ズンズン読み進められるが、後半の展開で、読者の頭は「?」マークで満たされる

この不可な部分をどう解釈するか、それは読者に委ねられ、読後も不思議な余韻に満たされる

デビュー作にして遺作、この作者の別の作品も読んでみたかった。

2022年『ジャクソンひとり』(安堂ホセ)

マイノリティによる痛快な復讐劇描く

主人公のジャクソンは、ブラックミックス(日本とアフリカンのミックス)で、ゲイ

ある日、突然送られてきたTシャツに書かれたQRコードを読み込むと、そこには全裸で貼り付けにされたブラックミックスの男性の姿があった。

この全裸の男は一体誰なのか。

誰がこんな動画を取ったのか。

そして、Tシャツを送り付けてきた犯人は誰なのか。

ジャクソンは、同じくブラックミックスの3人の男性と出会い、動画を取った犯人捜しをする中で、思いもよらない復讐劇を思いつく。

  • 差別
  • 暴力
  • 抑圧

一見して重めのテーマが盛り込まれた作品だが、全体をまとう空期感はライトで明るい

ジャクソンをはじめ「ブラックミックス」たちの会話もテンポがよくて子気味良い。

重いテーマを扱っているからこそ、切実さや深刻さを排除しているのだろうが、読み手の「差別性」とか「ステレオタイプ」をえぐり出すような文学性も、きちんと内包している。

ほどよい軽さ、ほどよい切実さ、ほどよいメッセージ性は、いかにも「文藝賞」っぽいと思う。

効果的に「対策」をするには

文藝賞への応募を検討している方は、その対策として「過去の受賞作」「受賞作家の作品」を数多く読む必要がある。

こうした作品を分析することの大切さは、多くの選考委員や編集者が口をそろえて言っていることだ。

特に「過去の受賞作品」を読む意義は大きく次の2つ。

  • 賞の傾向や特徴を把握できること。
  • 過去の作品との類似を避けられること。

この2つは一見矛盾するようだけれど、どちらも大切なことだ。

賞の性格にそぐわない作品を投稿することは、いわゆる「カテゴリーエラー」となってしまうし、過去の作品との類似は、その時点で「新人賞としてふさわしくない」とみなされてしまうからだ。

そこで、「過去の受賞作」や「受賞作家の作品」を格安かつ効率的に読むためのオススメサービスを2つ紹介しようと思う。

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