解説・考察・あらすじ「ミスター」の原作『私だけの所有者』ー「YOASOBI×直木賞」ー

文学
はじめに「バイアスなしで解説!」

 この記事はネタバレを含みます!

本書『はじめての』は、4人の直木賞作家による短編集だ。

島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都……

どれも今のエンタメ文学を牽引する、超売れっ子作家だ。

そんな売れっ子作家と、人気アーティストとのコラボ企画で生まれた本書

【YOASOBI×直木賞企画】『はじめての』解説記事はこちら
1、解説・考察・あらすじ『私だけの所有者』(島本理生)
2、解説・考察・あらすじ『ユーレイ』(辻村深月)
3、解説・考察・あらすじ『色違いのトランプ』(宮部みゆき)
4、解説・考察・あらすじ『ヒカリノタネ』(森絵都)

ちなみに、僕はその楽曲は1回たりとも聞いていない。

ということで、この記事は、楽曲によるバイアス一切なしで書かれている。

特に「考察」の部分に関しては、ひょっとして、楽曲とは全然違う解釈となっているかもしれないけれど、それはそれとして読んでいただければ嬉しい。

以下、「ミスター」の原作小説『私だけの所有者』(島本理生 著)について

  • テーマ
  • 登場人物
  • あらすじ
  • 考察

の4項目について書いていこうと思う。

それでは、ぜひ、最後までお付き合いください。

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【  芥川賞作家らも注目! Audible(オーディブル)の可能性を徹底解説

テーマについて

「はじめて人を好きになったとき読む物語」

「感情を持ったアンドロイド」と「不器用な所有者」が登場する。

ロボットと人間との間に「愛」や「友情」は成り立つのか。

本書はある意味で、人間とロボットの「共存」をテーマにした小説だともいえる。

親子でもなく、友人でもなく、恋人でもない、「人間とロボット」の強い絆の物語。 

作者の島本理生は言う。

恋よりも強い絆で結ばれた「私だけの所有者」にこの短編で出会ってください。

登場人物について

僕(私)
……家庭用「アンドロイド」。IQ110程度で、14歳ほどの知能と感情、言語能力をそなえている。かつてMr.ナルセに所有されていた。アンドロイドの使命について「所有者の命令に従って、物理的に役立つこと」と考えていたが、ルイーズというアンドロイドに出会ったことで、改めて自分にとっての「使命」や「幸福」について考えることとなった。現在は、国家の思惑により、とある島国で保護されていて、そこから「先生」なる人物と手紙でやりとりをしている。
Mr.ナルセ
……かつて「僕」(アンドロイド)の所有者だった男。優秀な研究者。両親と妻を失い、たった1人で生活を送っていたが、国家の思惑で身の危険にさらされる。繊細な心の持ち主で「僕」に対して冷淡に振る舞っていたが、その心の奥には「僕」に対する深い愛があった。紛争に巻きこまれて命を落としてしまう。
Mr.ナルセの弟
……Mr.ナルセとは仲違いして以来会っていなかったが、2年半ぶりに彼を尋ねてきた。政府に目をつけられているMr.ナガセを心配し、彼に国外へ亡命することを勧めた。ルイーズというアンドロイドを所有していて、彼女をまるで実の娘のようにかわいがっている。
ルイーズ
……家庭用「アンドロイド」。Mr.ナルセの弟に所有されていて、まるで実の娘のようにかわいがられている。アンドロイドの使命は「人間の孤独を癒やすこと」と考えていて、「僕」の価値観に影響を与えた
ナルセの妻
……優秀な研究者。「ナガセの妻」という理由で政府に連れ去られ陵辱された。ナルセに「亡命しよう」と訴えたが承諾されず、ある日とつぜん姿を消した。現在は政府の側にいて、「Mr.ナルセは紛争の主催者だったのではないか」と疑い、「僕」との手紙のやりとりを通して、ナルセに関する詳細な情報を収集しようとしている。「先生」なる人物の正体は、実は彼女。

あらすじ(700字)

家庭用アンドロイドの「僕」は、現在、とある島国で保護されている、

ある日「先生」なる人物から手紙を受け取り、その返事として自らの過去について語る。

「僕」はかつて、Mr.ナルセに所有されていた。

アンドロイドの使命は、所有者の命令に従い、物理的な役目を果たすこと」という使命感を持つ「僕」は、Mr.ナルセの意を汲んで、彼の生活の手助けをしようと努める。

しかし「僕」は、ことあるごとにMr.ナルセの意図に反した言動を取ってしまい、彼の気分を損ねてしまう。

Mr.ナルセに怒鳴られたり𠮟られたりする中で、「僕」は「Mr.ナルセの気持ちが分からない自分自身」を嫌悪していく。

そんなある日、「僕」は「ルイーズ」という家庭用のアンドロイドに出会う。

彼女の所有者はMr.ナルセの弟夫婦で、彼らはルイーズをまるで実の「娘」のようにかわいがっていた。

「自分の使命は、人間の孤独に寄り添うこと」というルイーズの使命感に触れた「僕」は、改めてアンドロイドとしての「使命」や「幸福」について問うようになる。

その1ヶ月後、「僕」はMr.ナルセと一緒に「首都」まで一泊旅行をするが、そこで紛争に巻きこまれて、Mr.ナガセとともに地下鉄のホームに閉じ込められてしまう

死を覚悟したMr.ナルセは、実は「僕」が「女のアンドロイド」だったことを告白する。

当時、女の子のアンドロイドは人間から「性の玩具」にされることもあったため、Mr.ナガセは「僕」に「男の子」を装うことを命令したのだった。

「僕」は「Mr.ナルセ」の深い愛に初めて触れ、ナルセから「人間として大事にされていた」ということに気がつく。

そして「Mr.ナルセと一緒にいたい」とつよく願う「僕」だったが、Mr.ナルセの命令に背くことが出来ず、最期はナルセを1人ホームに置き去りにして地上へと向かうのだった。

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考察「“僕”が初めて抱いた感情」

アンドロイドの「僕」には、複雑な思考や感情が備わっている。

もともと「自分の使命は、所有者の命令に従うこと」と信じて疑わない「僕」だったが、「ルイーズ」というアンドロイドに出会い、彼女の「使命感」に触れることで変化が生まれる。

ルイーズの「使命感」はこうだ。

「人間がアンドロイドを必要とするのは、不可能を可能にするため。つまりは、生きているることの孤独から解放されるため」

つまり、彼女によれば、

「人間がアンドロイドに求めていることは“身の回りの世話”じゃない。彼らは、1人で生まれて1人で死ぬ、その“孤独”に寄り添ってもらいたいのだ

ということになる。

実際ルイーズは、所有者の孤独に寄り添うために、彼らの「娘」を演じようとしていた。

「人の子らしく、怒ったりワガママをいったりして欲しい」

所有者夫婦のそんな願いに応えるべく、ルイーズは本や映画を見て「子供らしさ」を学んでいた。

そんな彼女の姿を見た「僕」の胸には、次のような問が芽生える。

じゃあ、僕の使命ってなんだろう。

アンドロイドの幸福ってなんだろう。

これらは「僕」にとって、初めて抱く「問い」だった。

Mr.ナガセは、よく「僕」にこう言っていた。

「知ることは、よけいな感情を負うことだ」

Mr.ナガセに言わせれば、今まさに「僕」が抱きはじめた「問い」というのも、「よけいな感情」なのだろう。

ただ「僕」は、自分とは違うルイーズの価値観を「知った」ことで、その「余計な感情」に、どうしても絡め取られてしまう

「所有者の命令に従うことが、自分自身の使命なのだ」というかつての価値観に変化が生まれてきたワケだ。

そして「僕」は暗い地下鉄のホームで、Mr.ナルセの愛に初めて触れることとなる。

Mr.ナルセはふっと安心したような笑顔を見せました。その笑顔を見たとき、僕は彼から本当に同じ人間として大事にされていたのだと気が付きました

Mr.ナルセは、決して自分を邪険に扱っていたわけじゃなかった。

彼の冷淡な言葉や態度は、彼が繊細な心の持ち主だったからなのだ。

そのことに気が付いた「僕」の内に、これまで抱いたことのない感情が爆発する。

私は倒れているMr.ナルセに訴えました。こわい、こわいです、一人きりはこわい、一緒にここから出て

この瞬間「僕」は初めてMr.ナルセを心から求め、そしてそれを強く訴えたのだと言える。

だけど、彼は家庭用のアンドロイドだ。

「出口へいけ」

そう所有者に命令されれば、その命令に従うための「抑制機能」が働いてしまう。

時間の経過をきっちりと刻むことのできるこの体が、おそらくMr.ナルセはもう生きていないであろう事実を私にはっきりと伝えてきました。

今も暗い地下鉄のホームで横たわっているMr.ナルセ。

そんな彼の近くにいたかった。

それでも家庭用アンドロイドの自分には、それができなかった。

その悔恨と罪悪感は、「手紙」を書いている今も「僕」の心に残り続けている。

彼の声は私の中に記録されていて、もう一度あの厳しい声で命令されて𠮟られたい、と願うのは、いったいどういう名前の感情なのか。私にも分かりません。

「僕」の内にある感情とはなんなのだろう。

それはきっと「Mr.ナガセの元へ行ってあげたい」という感情であり、「Mr.ナガセの近くにいたい」という感情なのだろう。

そして、あえて名前を与えるとすれば、それは「愛情」ということになるのだろう。

アンドロイドの「僕」にとって、それは「余計な感情」なのかもしれない。

ただ、それは「僕」がはじめて感じた「感情」だったことは間違いない。

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おわりに

以上、『はじめての』の考察と解説を終えたい。

ご存じの通り、この作品は人気アーティストYOASOBIとのコラボ企画で誕生したものだ。

正直、僕は、彼らの”これまでの”楽曲の「オリジナル」を極力読まないようにしてきた。

というのは、大ヒット曲「夜にかける」のオリジナル作品を読んだとき、妙に鼻白んでしまったからだった(ファンの皆さんごめんなさい)。

つまり、楽曲とオリジナルとのギャップを感じてしまったのだ。

だから、僕がこの本書を手に取ったのには、この4人の作家への信頼がある

僕はこの4人の直木賞作家の作品を多く読んできたし、彼らが紡ぎ出す世界観を信頼している。

そして、この短編集は、そんな僕の信頼にこたえてくれるものだった

文学好きの人にとっても、音楽好きの人にとっても、この記事があなたの何かの参考になったなら嬉しいです。

以上、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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