はじめに「小説を書きたいあなたへ」
この記事にたどり着いたということは、きっとあなたも小説を書く人間の一人なのだろう。
あるいは、
「これから小説を書いてみたい」
と思っている“執筆初心者”であるかもしれない。
いずれにしても、せっかく小説を書くのなら、検討したいのは「文学賞への投稿」である。
見事受賞すれば、多くの人に作品を届けられるし、大手であれば作家デビューへの道だって開けるかもしれない。
このブログでは、文学賞への投稿をゴールに据え「どのように小説を執筆するか」について詳しく解説をしている。
今回、解説したいのは、
「推敲するときの注意点・意識すること」
である。
ちなみに僕自身、かれこれ10年以上の執筆歴がある。
その中で、地方文学賞を受賞したこともあるし、大手新人賞で予選通過をしたこともあるし、大手出版社から出版をしたこともあるし、自費出版をしたこともある。
とりあえず、人並み以上に「書くこと」について考えてきた自負はある。
また、執筆する上で数々の指南書、ありていにいえば「ハウツー本」で勉強をしてきた。
この記事では、そうした僕自身の経験と、書籍に記された「プロの意見」を参考にしている。
それでは、最後までお付き合いください。
大まかなスケジュール
本題に入る前に、まずは大まかな執筆スケジュールについて示しておこう。
ここでは「締め切りまで丸1年ある」という前提でスケジュールを組んでみたい。
もちろん、「締め切りまで半年しかない」という方もいるだろうし、「3ヶ月しかない」なんて方もいるだろう。
ここに記しているのはあくまでも目安として考えて、残された期間に応じて柔軟にスケジュールを組んでもらえればと思う。
それでは、以下が理想的な執筆スケジュールだ。
1ヶ月目 | テーマ・応募先の決定 |
2ヶ月目 | 資料の読み込み |
3ヶ月目 | プロット作成 |
4~8ヶ月目 | 執筆 |
9ヶ月目 | 全体の俯瞰 |
10ヶ月目 | 推敲 |
11ヶ月目 | 寝かす |
12ヶ月目 | 最終調整・応募完了 |
なお、執筆スケジュールについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞ。
それでは以下で、10ケ月目「推敲」における、意識する͡ことや注意点について詳しく説明をしていく。
お時間のあるかたは、ぜひ、最後までお付き合いください。
推敲の考え方
あらためて推敲とは、
「文章を良くするために、何度も何度も表現を練り直すこと」
のことを言う。
これは中国の故事に由来がある。
それは、こんな話だ。
とある詩人が、
「僧は推す月下の門」
という句を思いついた。
その際に、
「いや、“推す”よりも“敲く”の方が良いかもしれない」
と思いついた。
すると彼は、もう寝食を忘れちゃうくらいに、
「推すがいいかな? いや、敲くの方がいいよな? でもやっぱり、うーん……」
と、一日中悩み続けた。
つまり、その詩人は、漢詩の表現として「月夜の門を“推す”」と「月夜の門を“敲く”」と、どちらが最適かについて、頭を悩ませていたのだった。
最終的には、韓愈という偉大な人間の助言もあって、
「月夜の門を“敲く”の方が、風情があって良い!」
ということで落ち着いたという話なのだが、この語源は「推敲」の本質を語っていると僕は思う。
要するに「推敲」とは、
「何度も何度も読み直し、全体的な手直しはもちろん“細部”についてもじっくりと表現を練る」
ということなのである。
この「推敲」という作業は、多くの作家が重要視していることで、
「推敲からが、執筆における本番!」
と、位置付ける作家もいる。
また、あの村上春樹も推敲を重んじる作家の一人で、彼は推敲のことを「ねじの締め直し作業」とか「とんかち作業」と呼んでいる。
これは小説を「建築」に喩えた表現で、小説という「建築物」を完成させるために、トンカチトンカチ調整を行うのが「推敲」であるというワケだ。
(ちなみに、村上春樹はこの作業が執筆において最も好きな時間らしい。)
以上を踏まえて、改めて「推敲とは何か」定義をすると、次の通りになる。
では、そんな推敲をする上で、どんな点に注意するべきなのだろうか。
以下では、それについて具体的に解説をしたい。
推敲時の注意点
注意点は次の5つ
推敲における注意点とは何か。
さっそく結論を言うと次の5つになる。
以上について、詳しく解説をしていこう。
しばらく寝かせる
第一稿が完成したら、すぐに推敲作業に入らず、一定期間「寝かせる」必要がある。
とにかく、推敲にとっては「客観性」が大事なので、書き手はいったん作品のことを忘れて、自分の頭を冷やさなければならない。
冷静な頭になったら、さあ、自分の作品を読み返してみよう。
するとビックリするくらい作品の印象が違って見えるはずだ。
「作品の印象が違って見える」というのは、大体の場合は悪い意味で、これまで気が付かなかった「欠点」や「粗」というのが見えてくるということだ。(こういう点においても、推敲は書き手にとっては結構つらい作業だったりする。)
では、どれくらいの期間、作品を寝かせばよいのだろう。
個人的には2~3週間くらい寝かせるのがオススメなのだが、こればっかりは「応募締め切り」とのかねあいもあるので、時間がなければ4~5日程度でもいたしかたないだろう。
参考までに、あの村上春樹は、必ず1カ月は作品を引き出しの中にしまい込むそうだが、それくらいの期間作品と離れれば、まちがいなく冷静な頭で作品を推敲できるだろう。
また、作品と離れている間は、執筆そのものから離れた方が良い。
というのも、推敲というのは、「書き手マインド」を捨てて「読み手マインド」でしなければならないからだ。
そういう意味でも、作品を寝かしている期間は、積極的に読書をすることをオススメする。
読み手としての準備をすることができるだけでなく、思いもよらない着想や、新たな視点を獲得することにもつながるだろう。
なお、効果的に読書をするなら【 Audible(オーディブル)】などの耳読書がオススメなので、ぜひこちらも参考にしてみてほしい。
プリントアウトする
推敲はプリントアウトして読むことを推奨する。
ディスプレイ上で読むのと、紙で読むのとでは印象が全く違うので、プリントアウトすることで「ディスプレイ上では気が付かなかったミス」を高確率で見つけることができる。
もちろん、環境上、プリントアウトができなければ、ディスプレイ上での推敲でもアリだとは思うが、もしも、あなたが今後も執筆を続けていくつもりなら、やっぱりプリンターは持っておいた方が良いと思う。
ちなみに、現在僕が使っているのは、キヤノン『PIXUS TS203』。
魅力はなんといっても5,000以下という価格の安さだ。
文字がくっきり印刷できる「顔料ブラックインク」というのを採用しているため、文字の多い原稿の印刷に向いている。
コンパクトサイズで重さも約2.5kgと軽量なので、狭いスペースに設置しやすい点も魅力の1つ。
しかもここまで低価格なのに、4色のカラー印刷に対応しているので、小説だけでなく一般的な書類やハガキにも対応が可能。
プリンターを購入するなら、この辺りもぜひ参考にどうぞ。
黙読と音読を交える
推敲は黙読と音読を繰り返しつつ行うと良い。
というのも、黙読と音読とで、作品の印象は異なるからだ。
参考までに、僕は大きく次のように黙読と音読をしながら、推敲作業を進めていく。
以上が、ざっくりとした推敲のプロセスだ。
そもそも、小説を読む人の多くが、作品を「黙読」で「通読」をする。
とすれば、推敲の第一にするべきは、作品の全体を黙読することだといっていいだろう。
その際に、「訂正箇所」や「気になる箇所」があれば、そのつど原稿に赤ペンを入れたり、付箋を貼ったりする。(この時点では、まだPCを開かなくても良い。)
そして、全体のチェックが終わったら、今ほどのチェック項目を踏まえつつ、今後は章ごとに音読をして「文章のリズム」をチェックしていく。
その際は、PCを開いて、実際に作品に加筆修正を施していく。
そして、章ごとの推敲が終わったら、今度は作品全体を音読し、再び文章のリズムをチェックしていく。
なお、音読は自分で声を出して行ってもいいが、僕はいつもWordの「校閲」機能の「音声読み上げ」を使っている。
多少の読み間違えはあるものの、かなりラクなのでオススメだ。
音読チェックが終わったら、最後に、読者の立場に立ちながら作品全体を黙読する。
そして、ここで問題なければ「晴れて作品完成!」ということになる。
(なお 問題があれば、加筆修正 → 黙読 を繰り返していくことになる )
4~5回は推敲する
推敲は何回くらいすればいいの?
こんな疑問を持つ人も多いと思う。
結論を言えば、
最低限4~5回はした方が良い
ということになる。
というのも、先ほどの章で確認した通り、「全体と細部」、「黙読と音読」を交えていくと、必然的に4~5回は推敲することになるからだ。
とはいえ、基本的に、推敲にゴールはない。
僕の場合、最低限4~5回はするという話で、長編だったり、納得できない作品だったりすると、平気で10回くらい推敲することもザラにある。
なんなら、それくらいやっても、まだまだ細かいミスが見つかったりするものなので、推敲は出来るなら繰り返し繰り返し、徹底的にやった方が良い。
それこそ、納得がいかない箇所があれば、(中国の故事のように)時間をかけて、じっくりと悩めばいいのだ。
個人的に僕は推敲が嫌いじゃなく、
「こっちが良いかな? それとも、あっちがいいかな?」
と悩むことも、執筆の醍醐味だと思っている。
加筆より削除が大事
推敲は、大きく「加筆」と「削除」の2つに分けることができるが、このうち重要なのは「削除」であると断言できる。
というのも、執筆において「削ることの重要さ」を口にする作家は本当に多いからだ。
たぶん、すでに小説を書いている人ならわかると思うのだが、執筆中にこんなことを考えることはよくある。
「ちょっと説明しすぎかな」
「ちょっと削ったほうが良いかな」
そして、この「残すか、削るか」は、小説ジャンル問わず、多くの作家が常に頭を悩ませる“宿命的な問い”なのである。
たとえば、あの太宰治は、
「削った方が良いかなと悩んだら、思い切って削る」
といっているし、あの川端康成は、
「会話文の9割は削る」
とまでいっている。
この事情は、程度の差こそあれ、どの小説ジャンルにおいても変わらないだろう。
一定期間寝かせた原稿を読むと、多くの「欠点」が見えてくる。
中には、削ったほうがスマートになるような「無駄」や「冗長さ」というのがある。
書き手としては、「腹を痛めて産んだ子」なので、やっぱりかわいいもので、削ることに大きな抵抗感を抱くと思う。
だけど、そこは、心を鬼にして削るべきものは削るべきなのだ。
太宰も言っている通り、「削るか残すか」と悩んだら、大抵の場合は削るべき案件だと思った方が良い。
それくらい、推敲において「削る」ことは超重要なのである。
余談だが、僕は大手出版社から作品を出版したことがある。
その際に、生まれて初めてプロから「校正」ってヤツを受けて、生まれて初めて「ゲラ」ってヤツを受け取ったのだが、そこにはとんでもない量の赤ペンが入れられていた。
そして、多くの「ムダ」な箇所が指摘され、なさけ容赦なく削られていた。
「あー、こうやって、作家と校正家がケンカをするんだろうな~」
と、したり顔で悠長でいられたのは、いうまでもなく、僕が素人だったからなワケだが、それでも素人ながら「校正」の厳しさと「削ることの大切さ」を身をもって知ることができた。
ということで
「推敲とは、これ、削ることなり」
そんな稚拙な警句を弄しつつ、最後に記事のまとめを行おう。
まとめ
最後に、この記事の要点を整理しておきたい。
この記事では「推敲するときの注意点・意識すること」について解説を行ってきた。
この記事をまとめると、次の通り。
なお、この記事の内容を踏まえて、以下の記事も合わせて読んでいただくと、推敲についてより深く理解ができると思うので、ぜひ参考にしていただきたい。
さて、ここまで推敲について詳しく解説をしてきた。
はじめて小説を書く人にとって、「推敲」は辛い作業になるかもしれない。
だけど、「推敲こそ、執筆の醍醐味」と考える作家が多いのもまた事実。
要するに、各人の気持ちの持ちようなのだ。
執筆は「自分が楽しんでなんぼ」
諦めず、根気よく、粘り強く、そして何より楽しく執筆を頑張っていきましょう。
この記事が、あなたの執筆ライフの役に立てれば幸いです。
解説記事は以上となります。
最後に「効率よく読書ができるサービス」や「格安で出版できるサービス」について紹介するので、そちらも、ぜひ参考にしてみてください。
”Audible”で時間を有効活用
Audible(オーディブル)なら、すき間時間を利用して作品を“聴く”ことができる。
活字ではなく”音声”で聴くことによって、文章のリズムや息遣いが伝わってくるので、文章力を磨く上でも有効だ。
たとえば各種新人賞の受賞作品や、芥川賞受賞作品 、直木賞受賞作品 なんかが 月額1500円で聴き放題。
執筆に関する書籍も読み放題なので、とても役に立つサービスとなっている。
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