感想・解説『寝ながら学べる構造主義』(内田樹)ー人間はあてにならない ー

哲学
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あなたは本当に大丈夫?

毎日のように、ニュースをにぎわす様々な事件

「飲酒運転で、警察官が逮捕」

「公金の着服で、政治家が逮捕」

「窃盗の罪で、僧侶が逮捕」

「傷害の罪で、弁護士が逮捕」

とかく、この手の事件は、世間から「権威的である」と認識されている人々の場合、まるで鬼の首を取ったかのようにつるし上げられる。

まぁ、それが良い悪いは置いておいて、彼らはその過ちによって、世間的に悪人というレッテルを貼られ、安逸の人生から真っ逆さまに転落をする。

そんな報道を見るにつけ、

「ああ、ぼくは本当に大丈夫なんだろうか」

と、そこはかとない不安が胸をよぎる。

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人間はあてにならない?

ぼくは、自分を信じて生きている。

だけど、一方で、「自分はあてにならない」と、戒めながら生きてもいる

世の中には、自分の「理性」や「意志」を信頼して生きている人というのは、一定数いるようだけど、それでも、「ぼくは、自分をあてにしていません」と思う人のほうが、多いのではないだろうか。

「自分はあてにならない」=「常識」

いま、そんなふうに乱暴に結論づけてみても、怒られることもないだろう。

だけど、じつは、その常識ってのは、数十年前までは、まるで通用しないものだったという。

むしろ、

「人間は主体的に行動を選ぶことができる」

「人間の本質は理性や意志だ」

「人間はよりよい未来が切り開ける」

つまるところ、「人間はあてになる生き物だ」という価値観が、かつての常識だったというのだ。

では、そのかつての価値観を覆したのは、一体何か。

それが「構造主義」という、フランスから爆発的に世界に広まった、一連の思想群なのだ。

 

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「構造主義」の現代的な意義

今回紹介する、『寝ながら学べる構造主義』(内田樹 著)では、その辺の、思想的変遷と、構造主義の思想的な破壊力とが、具体的かつ、分かりやすく紹介されている。

この『構造主義』については、以前、

正常とか異常とか、一体何が決めてるのか ー『狂気の歴史』ミシェル・フーコー より

でちょっとだけ紹介した。

「みんな違ってみんな良い」的な、いわゆる「多用性の尊重」といった、ぼくたちの『常識』が作られたのには、「構造主義」の思想が大きく影響している。

いまでこそ、「多文化共生を目指そう」とか「多様な性を理解しよう」とか、ひとびとは、他者を尊重しようとする姿勢を見せ始めているように思う。

ところが、本書でも触れられているように、少し前までは「ヨーロッパ人が1番偉いんだよ」とか、「女性よりも男性が偉いんだよ」とか、「子どもよりも大人が偉いんだよ」とか、いま口にしようものならば、秒で炎上してしまう言説が世に支配的だったというのだ。

だから、ぼくたちの社会に「他への理解」という姿勢をもたらした、「構造主義」という思想を知ることは、今のぼくたちにとっても、とても意義あることだと思うのだ。

 

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「構造主義の」射程の広さと破壊力

じつは、ぼくが、哲学とか思想とかに興味を持って、「ちょっと腰を据えて勉強してみようかなあ」と思い立ち、初めて手にしたのが本書だった。

理由は「寝ながら学べる」というキャッチコピーである。

そして、これは羊頭狗肉なんかじゃなくて、本書は本当に分かりやすい

本書で紹介されるのは、次の点だ。

  1. 構造主義が生まれた歴史的な背景
  2. 構造主義の始祖「ソシュール」の思想
  3. 構造主義の代表その1「フーコー」の思想
  4. 構造主義の代表その2「バルト」の思想
  5. 構造主義の代表その3「レヴィ・ストロース」の思想
  6. 構造主義の代表その4「ラカン」の思想

ご覧の項目から見て分かるとおり、本書はとても体系的で、構造主義を知る上で重要な情報が網羅的に整理されている。

詳しい話は、ここで説明することはあえてしないが、本書は目からウロコの連続だと思う。

そして、構造主義者たちが展開する論考は、ぼくたちの偏見や枠組みをぐらぐらと揺さぶってくる、とてもスリリングな論考ばかりだ。

たとえば、こんな感じ。

ソシュールは「コトバがなければ、世界なんて認識できないから」的なことを言ってくるし、

フーコーは「きみの価値観なんて、ぜんぶ幻想だから」的なことを言ってくるるし、

バルトは「小説を読む上で、作者なんてのはどうでもいいから」的なことを言ってくるし、

レヴィ・ストロースは「家族愛なんて、つくられたものだから」的なことを言ってくるし、

ラカンは「きみのアイデンティティなんて、錯覚だから」的なことを言ってくる。

ええ、嘘でしょ? と、にわかには信じられないかも知れないが、現代の思想の多くは、これらを前提にして展開している。

しかも、上記の人たちの論考は、言語、政治、文化、芸術、医学、心理学など、驚くほど多岐にわたって展開している。

そんな構造主義者らが口をそろえていうのは、要するに

「人間の主体なんて、あてにならないぞ」

「人間の主体なんて、幻想だぞ」

と、こういうことなのだ。

そんなネガティブな思想、読みたくないわあ、と思う人もいると思う。

たしかに、この思想は「よし! 自信をもって、強く生きていくぞ!」と思いたい人には、全くと言って良いほど向いていない。

だけど、「できれば人に寛容でありたいなあ」とか「できれば人に優しくしたいなあ」とか、「誰かをおもんばかって生きる姿勢」を養いたい人には、とても向いている。

「自分に自信を持つ」ことは、一歩間違えれば、自分を絶対視する傲慢や、他者を裁く暴力につながってしまうと、個人的に思っている。

そういう意味でも、いろんな物事を相対化する構造主義のような考えは、人間関係を円滑に営む上でも大切なんじゃないかと思う。

ぜひ、興味をもった人は、本書を手に取って、まずは軽い気持ちで「寝ながら」学んでみてはどうだろうか。

その他おすすめの本

『史上最強の哲学入門』(飲茶 著)

この人の本は、とにかく、めちゃくちゃ分かりやすい

難解な哲学や思想を自分の中で完璧に消化して、それをやさしい表現と、分かりやすい具体例で「噛んで含めて」教えくてれる。

しかも、文章がとてもユニークで読者サービスも旺盛。

本書は、構造主義だけでなく、ギリシア哲学 ~ 構造主義とそれ以降(ポスト構造主義)まで網羅しているので、とにかく西欧の思想すべてを「ざっくり」と理解したい、という人に超おすすめ。

おなじく作者は

『14歳からの哲学入門』(飲茶 著)

という、本も出している。

こちらは、『構造主義』前後の思想を、より丁寧に解説してくれている。

たぶん、飲茶さんの著書をすべて読破すれば、これまでにどんな思想や議論が展開されてきたか、大枠を理解することができると思う。

『はじめての構造主義』(橋爪大三郎 著)

ちょっと、前の本になるのだが、まったく古びていない。

現代の「社会学」の権威による、構造主義の解説書。

内容は本格的でありながら、とても平易な日本語で説明してくれる。

前半は、構造主義が生まれる歴史的な経緯、後半は構造主義の代表「レヴィ・ストロース」の思想についての詳しい解説だ。

ぼくは、『寝ながら学べる構造主義』を読んだ後、本書を手にして、理解をかなり深めることができた

今回の記事で「構造主義」や大陸系「現代思想」に興味を持った人は、これらの本を合わせて読んでみることを強くおすすめする。

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