はじめに「執筆には準備が必要」
「さぁ、小説を書くぞ!」
そう思い立ったとき、いきなりぶっつけ本番で一行目から書き出すというのは、あまり得策ではない。
もちろん、そうやって見切り発車で書き出して、難なく作品を完成させられる“天才肌”の人もいるのだろうが、(僕を含めて)多くの凡人にとって、それはとっても難しいこと。
というわけで、執筆前の準備として「あらすじ」とか「プロット」を作ることが大切になってくるわけだが、こう聞いて、あなたはこう疑問に思ったかもしれない。
「え? あらすじとプロットって、別物なの?」
これは僕の実感でもあるのだが、「あらすじ」と「プロット」を混同している書き手というのが、意外に多い。
よく「小説の指南書」なんかでも、
「執筆においてプロット作りが重要!」
と解説しているものも多いのだが、読者の中には、
「プロット……って、要するにあらすじのことだよな」
と、ぼんやりした理解で読み進めている方も少なくないのではないだろうか。
そこで、この記事では大きく次の2つについて解説をしようと思う。
【 この記事で解説すること 】
1、「あらすじ」と「プロット」の違い
2、「あらすじ」の作り方
ちなみに僕自身、かれこれ10年以上の執筆歴がある。
その中で、地方文学賞を受賞したこともあるし、大手新人賞で予選通過をしたこともあるし、大手出版社から出版をしたこともあるし、自費出版をしたこともある。
とりあえず、人並み以上に「書くこと」について考えてきた自負はある。
また、執筆する上で数々の指南書、ありていにいえば「ハウツー本」で勉強をしてきた。
この記事では、そうした僕自身の経験と、書籍に記された「プロの意見」を参考にしている。
それでは、最後までお付き合いください。
あらすじとは何か
定義を整理
早速、あらすじの「定義」について、次のように説明できる。
これら1~3は、ほぼ同じことを言っていて、要するに、
「物語を最大限にシンプル化したもの」
と言い換えてもいいだろう。
ちょうど、小説を人間に喩えるとすれば、一番の根本となる「骨格」となるもの、それが「あらすじ」だといえる。
だから、実際にあらすじを書いてみると、大抵の場合が「類型的」(典型的)になるのを避けられないワケだが、ある意味それは仕方のないことなのだ。
具体例でイメージ
たとえば、「恋愛小説を書きたい」と思った場合、次のように「あらすじ」を書くことができる。
【 太郎と花子の恋愛物語 】 太郎と花子は幼なじみだ。 小学校までは、互いに意識をしなかった2人。 それが中学になり、互いに意識しあうようになる。 そこに恋のライバル次郎があらわれる。 次郎は手をかえ品をかえ、2人の仲を裂こうとする。 そんな困難を乗り越えようとする太郎と花子。 ついに次郎を退けた2人は、卒業式の日に結ばれるのであった。
ここではイメージしやすいように、いかにもテンプレ通りで、かつ超シンプルな「恋愛物語を準備した。
まず、「あらすじ」というのは、これくらいシンプルなものでよい。
逆に、シンプルに書くからこそ、物語の「全貌」や「要旨」というのを簡単にイメージすることができるのだ。
上記の「太郎と花子の恋愛物語」について見てみると、
【 互いに意識しない2人(起)】
↓
【 ひょんなことから意識しあう(承) 】
↓
【 そんな2人を邪魔するライバル出現(展) 】
↓
【 困難を退け結ばれる2人(結)】
と、「起承転結」が簡潔にビジュアル化していることが分かる。
また、「あらすじ」というのは、「物語の流れ」を簡潔に示すものなので、多くの場合「時系列順」になる。
上記の「太郎と花子の恋物語」について見てみると、
【 幼少時代 】
↓
【 小学校時代 】
↓
【 中学校時代 】
と、分かりやすく一方向に時間が流れていることが分かる。
ただ、このあらすじを単純に膨らませただけでは、恐ろしく単調でつまらない作品となるだろう。
そこで大切なのが「プロット」という考え方なのだ。
プロットとは何か
定義を整理
次に「プロット」の定義についてだが、次のようにまとめることができる。
まず、プロットとは何かをイメージする際、
「『あらすじ』をもっと細かく、もっと具体化したもの」
と考えてもらえれば良いだろう。
先ほどのたとえで、あらすじが「骨格」だと説明したが、それに「肉」をつけ、さらに「服」を着せて見栄え良くしたものが「プロット」だと考えてもらえればいい。
では、具体的にどんな「肉」や「服」をたしていけば良いのだろう。
具体化すべき要素として、まず「5W1H」が挙げられる
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
小説で書きたいシーンごとに「時間」、「場所」、「人物」、「行為」、「背景」、「程度」についての説明を書いていく。
さらにそこに加えて、
- 登場人物の性格や過去
- 伏線の張り方・回収方法
などについての説明も書いていく。
すると、骨であった「あらすじ」は、次第に「肉」付けされ、見栄えのする「服」をまとうことになる。
以上を踏まえて、「あらすじ」と「プロット」の関係は、
「あらすじ < プロット < 完成品」
とイメージすると理解しやすいと思う。
最後に、プロットの特徴として、とても重要な点がある。
それが「実際の執筆順にシーンを配置している点」である。
これについては、具体例で説明した方がイメージしやすい。
具体例でイメージ
プロットの大きな特徴「実際の執筆順にシーンを配置している点」を説明する上で、もう一度、さきほどの「恋愛物語」のあらすじを示したい。
【 太郎と花子の恋愛物語 】 太郎と花子は幼なじみだ。 小学校までは、互いに意識をしなかった2人。 それが中学になり、互いに意識しあうようになる。 そこに恋のライバル次郎があらわれる。 次郎は手をかえ品をかえ、2人の仲を裂こうとする。 そんな困難を乗り越えようとする太郎と花子。 ついに次郎を退けた2人は、卒業式の日に結ばれるのであった。
繰り返すが、これは「あらすじ」なので、物語は時系列順に示されている。
ただし、このまま小説を書いたとすると、それは恐ろしく単調でつまらない作品となるだろう。
それを避けるために「プロット」作成の段階では、各シーンの配置に工夫をこらすことになる。
たとえば、小説冒頭で「卒業式のシーン」を書いたっていいし、「次郎の画策」を書いたって良いだろう。
また、小説の中盤で「太郎と花子の幼少時代」を回想したっていいし、「小学校時代のエピソード」なんかを挿入したっていい。
要するに、プロット作成とは、時系列にとらわれることなく、
「各シーンをどういう順番で配置すれば、物語がおもしろくなるか」
このことを考えていく作業でもあるのだ。
あらすじとプロットの違い
ここまでの内容を整理して、「あらすじ」と「プロット」の違いについてまとめてみよう。
1、「あらすじ」が物語の流れを簡潔にまとめたものであるのに対して、「プロット」は物語がおもしろくなるようにシーンの配置を工夫したものである。
2、「あらすじ」の多くが時系列順に示されるのに対して、「プロット」は実際の執筆がイメージできるように小説の構造が詳細に示される。
3、「あらすじ」が物語の全貌を把握しやすいように簡略化したものであるのに対して「プロット」は“5W1H”や“登場人物”や“伏線”などを具体化し、1つ1つのディテールを深めたものである。
以上を踏まえて、「あらすじ」と「プロット」をシンプルにイメージ化すると、
「あらすじ < プロット < 完成品」
ということになる。
あらすじの作り方
次に、「あらすじ」の作り方について具体的に解説をしたい。
まず、あらすじ作りのおおまかなステップをまとめると次の通りになる。
第1に、あらすじを「時系列順」に書くことで、物語の時間軸が明確になり、書き手自身が物語の全貌を把握することができる。
さらに、書こうとしている物語が「いつからいつまで」の物語なのかをはっきりさせておく必要がある。
先ほど例に挙げた恋愛物語であれば、
「主人公の幼少時代から中学卒業までの物語」
ということになるだろう。
第2に、物語の山場( つまり、クライマックス )を決めておく。
先ほど例に挙げた恋愛物語であれば、
「恋のライバルの登場と、主人公たちの奮闘」
が、山場にあたる。
こここそが、物語の核となり、物語が魅力的になるかどうかを左右すると重要ポイントだといっていい。
また、執筆の前半は、この「山場に向けて書き進めていく」といったイメージなので、「山場=執筆の中間ポイント」とも考えられる。
第3に、山場を経て、物語がどのような結末に至るかを決める。
先ほどの例に挙げた恋愛物語であれば、
「ライバルを退け、主人公たちが結ばれる」
が、結末になる。
この「山場」と「結末」が決まりさえすれば、プロット作成や執筆において、作業がブレることは基本的になくなる。
第4に、必要に応じて、あらすじのディテールを書き足す。
ここについては、プロット作成において本格的に行う作業なので、「必須」ではなく「推奨」と考えてもらえればよい。
たとえば、先ほどの恋愛物語を例にすれば、
「主人公2人は、どのようにお互い意識をするようになったか」とか、
「ライバルは、主人公たちの恋愛をどのように邪魔するか」とか、
具体的に膨らませそうな部分があれば、あらすじ段階で書き足しても全く構わない。
以上を踏まえて、「あらすじの作り方」を改めてまとめると、
- 物語の時系列順の流れを決める
- 物語の山場を決める
- 物語の結末を決める
- (ディテールを書き足す)
ということになる。
とくに、
・物語の冒頭 ・物語の山場 ・物語の結末
この3点をきちんと決めることが、あらすじ作成において最も重要なポイントだといっていいだろう。
あらすじ → プロット作成へ
あらすじが完成したら、次に「プロット作成」に取りかかることになる。
とはいえ、それが具体的にどのような作業なのか、イメージできない人もきっと多いと思う。
ここでは、プロット作成の工程についてだけ、簡潔に示しておきたい。
おおまかなステップは大きく5つ。
念のため言っておくと、これらは、きっちりと順番にこなしていく必要はない。
2つの行程が同時進行することもあるし、すでに済んだ行程に戻って、内容を練り直すこともある。
上記は、ざっくりとした順番なので、あくまで1つの目安としてとらえていただければと思う。
なお、「プロット作成の工程」について具体的に知りたい方は、以下の記事で解説をしているので、ぜひ参考にしていただきたい。
創作する上で意識したいこと
意識すべきは4つ
ここまで「プロットとあらすじの違い」や「あらすじの作り方」について、その具体的について解説をしてきた。
最後に、魅力的な小説を作るために、普段から意識すべきことについて紹介したい。
まず、結論は以下の通りだ。
人間を観察・分析する
いきなり曖昧なアドバイスで恐縮なのだが、とにかく一番大切なのは「“人間”について興味を持つこと」だ。
そして、人間を観察し、分析をしてみることが大切だ。
対象は誰でも良い。
まずは身近な人からで構わない。
いい人も悪い人も、親しい人も苦手な人も。
「どうしてこの人は、こういう言動をするのだろう」
「この人の言動の背景には、いったい何があるのだろう」
こんな風に、とにかくいつも彼らの言動にアンテナをたて、彼らの心理を分析してみる習慣をつける必要がある。(というか、小説を書きたい! って人には、すでにそうした習慣が付いていると思う.……)
想像力を働かせる
その延長で、創造力を働かせることも大切になる。
たとえば、
「もしも、〇〇が××だったら、あの人はどういう言動をしたのだろう」
といった発想で、ひたすら思考を深めていくと良いだろう。
そうした「もしも」の発想は、小説の中心テーマにつながることがある。
ミステリー作家の貴志祐介は次のように説明している。
創造力を膨らませる思考訓練として私がよく実践しているのは「もし〇〇が××だったらどうなるか」ということ。日常生活のなかにある普通の出来事を“ひとひねり”して、みるのだ。そのままの状態であれば珍しい事象でなくても、極端にエスカレートさせてみたり、あるいは図式を逆転させてみたりするとどうなるか、創造をめぐらせてみるのである。(貴志祐介『エンタテイメントの作り方』より)
こうした思考訓練が、魅力的な登場人物を作り上げることへと繋がっていく。
たとえば、文豪の芥川龍之介はその類いまれな想像力によって「極限状況」を作りだし、人間の本性を暴こうとした作家である。
代表作『羅生門』は、まさにそうした作品の代表であり、その発想や構成や心理描写など、参考にする点は非常に多い。
取材や情報収集を欠かさない
それから、情報収集や取材というのも必要だ。
これは何も、取材旅行へ行こうとか、インタビューをしようとか、そういうことではない。
テレビや映画、マンガ、ニュースからの情報に触れて、ちょっとでも「使えそうだ!」と思ったものは、きちんとメモをしようと言うことなのだ。
たとえば、事件、事故、地域、職業、文化、歴史などなど。
能動的に得た知識も、受動的に得た知識も、「すべては小説の種になるかもしれない!」という意識をもって生活をすることが大切だ。
とにかく読書をしまくる
そして、なんといっても「読書」である。
これは、あらゆる作家、編集者、文芸評論家が口をそろえていうことだ。
「小説家になるためにどんな訓練や習慣が必要ですか?」
こうした質問に対して、村上春樹は次のように答えている。
小説家になろうという人にとって重要なのは、とりあえずたくさん読むことでしょう。実にありきたりな答えで申し訳ないのですが、これはやはり小説を書くための何より大事な、欠かせない訓練になると思います。小説を書くためには、小説というのがどういう成り立ちのものなのか、それを基本から体感として理解しなくてはなりません。
(村上春樹『職業としての小説家』より)
小説を書く上での「読書のメリット」については、この記事で扱い切れないくらいに多い。
ただ、それをムリヤリ一言にまとめるなら、
「書き手・読み手としての目をこやすこと」
ということになるだろう。
それは、言葉で説明できるものでも、言葉で理解できるものでもない。
ホンモノに触れるなかで、体感的に理解すべきものなのだ。
そもそも「小説を書きたい!」と思ったあなたは、一方では「本好き」だったり「読書家」だったりするはずだ。
であれば、なにも難しいことはなく、これまで通り、自分が良いと思う、自分が好きな作品をとことんまで読めばいいのだ。
ただ、これから意識すべきことは、「“自分だったらどう書くか”という視点を持って小説を読むこと」である。
そうした視点で作品を読んでいくと、文章力や表現力、構成力の向上にもつながるからだ。
とはいえ、「読書をしたいけど、時間がない!」という人は実際多いと思う。
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【 参考記事 】
この記事のまとめ
この記事では主に2つのことについて解説をしてきた。
【 この記事で解説したこと 】
1、「あらすじ」と「プロット」の違い
2、「あらすじ」の作り方
それぞれのトピックについて、結論をまとめると以下の通り。
初めて小説を書く人にとって「あらすじ作成」や「プロット作成」は、とても難しいことに思われるかもしれない。
まずは、ぼんやりとしたもので構わないので、自分の描こうとする物語を思いつくままに書きつけて行けばOKだ。
あまり難しく考えることなく、まずは、PCの前でキーボードを叩くところから始めることが大切だと思う。
執筆は「自分が楽しんでなんぼ」であり、「自分が気持ちよくてなんぼ」の世界である。
結局のところ、書きたいから書くのであって、その原点を忘れなければ、きっと1つの作品を描き上げられるはずだ。
ぜひ、楽しんで執筆を続けていきましょう。
この記事が、あなたの執筆ライフの一助になれば幸いです。
それでは、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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