はじめに「エンタメ小説の新人賞」
エンタメ小説とは純文学に対置されて語られることが多く、別名「大衆文学」と呼ばれたりもする。
「エンタメ小説」と「純文学」両者の違いついては、こちらの記事 【 【純文学とエンタメ小説の違い】を分かりやすく解説 】 を参考にしてほしいのだが、「エンタメ小説って何?」という問いにシンプルに答えるならば、
「読者を飽きさせない面白い物語」
ということになるだろう。
そんなエンタメ小説を対象にした、公募の新人賞は数多くある。
これについても、詳しくはこちらの記事【 【公募エンタメ小説新人賞】の傾向・特徴を徹底解説 】を参考にしてほしいのだが、その中でも「ジャンル問わず」広く募集をかける長編新人賞が次の4つである。
この4つの賞が他の新人賞と異なる点は、いわゆる「ノンジャンル系」の小説を受け入れる点だ。
また、それぞれの賞には、それぞれの賞の“色”というものがあるので、たとえば、「エンタメ小説を書いて、小説を応募してみたい!」という思いがある人は、各賞の傾向や特徴を把握しておく必要がある。
ということで、今回は「小説野性時代新人賞」(KADOKAWA)について解説をしてみたい。
記事では主に「賞の概要」と「賞の特徴と傾向」、「代表的な受賞作」についてまとめていく。
また、最後に作品を書く上での「効果的な対策方法」と、その「おすすめサービス」について紹介するので、ぜひ参考にしていただければと思う。
参考までに、恥ずかしながら僕の「執筆経歴」については(ぱっとしないけど)以下に挙げておく。
では、どうぞ、最後までお付き合いください。
概要をチェック
詳しい解説に入る前に、まずは賞の概要をチェックしておく。
※小説野性時代新人賞のHPはこちら。
出版社 | KADOKAWA |
賞金 | 100万(+記念品) |
枚数 | 200枚~400枚 (400字詰原稿用紙) |
応募締め切り | 8月末 |
発表 | 5月 |
応募総数 | 600~800編程度 |
主な受賞者 | 蝉谷 めぐ実(2020年) など |
その他 | 「受賞作なし」の年あり |
特徴①まだ「若い」新人賞
「小説野性時代新人賞」は、KADOKAWAが主催する、公募型でノンジャンルのエンタメ小説新人賞だ。
その歴史はまだまだ浅い。
第1回は「野性時代フロンティア文学賞」として、2009年に開催。
2020年の第11回からは「小説野性時代新人賞」として名称を変更し、現在に至る。
第1回から歴代の受賞作家を眺めてみると、現役で活躍する作家は極めて少なく、同じ「ノンジャンル系」の新人賞の「小説すばる新人賞」や「小説現代長編新人賞」なんかと比べると、どうしても見劣りしてしまう。
毎年の応募総数は700編前後と、それなりの人気はあるのだが、集まってくる作品の質は「小説すばる新人賞」や「小説現代長編新人賞」のそれとは異なっているのだろう。
それが理由に、「小説野性時代新人賞」では、「受賞者なし」なんて年が珍しくない。
2016年~2022年(全7回)のうち、「受賞者なし」はなんと4回。
もちろん、これをどうとらえるかは人それぞれなのだが、僕はやっぱり「作品の質が他の新人賞に劣ってしまっているからではないか」と考えている。
とはいえ、それは見方を変えれば「安易に受賞者を出さない」という出版社と選考委員の誠実さの表れだと思うので、そこは評価できる点なのだろう。
さて、以上のことから言えることは、
・「将来作家として生きていきたい」と真剣に考える人は、他の新人賞に応募すべき ・「とにかく新人賞を受賞してデビューしたい」とひとまず考える人は、本賞の検討の余地あり
以上2点だと僕は考える。
ただ、「小説野性時代新人賞」は、まだまだ歴史の浅い新人賞だ。
当然ここから大物作家が表れることだってありうるし、集まってくる作品の性格が変化することだってありうる。
上記はあくまで、「現時点での評価」と参考にしていただければと思う。
特徴②「ライトな作品」がウケる
実は、僕は以前この賞の1次選考を突破したことがある。
その時の作品は「小説すばる新人賞」でハネられた作品を書き直したものだった。
「どうして小説すばる新人賞ではハネられて、小説野性時代新人賞で拾われたんだろう」
自分なりに分析をしてみた結果、
「作風がライトだったからではないか」
という結論に至った。
もちろん、書き直しが成功して、作品が良くなったという可能性だってあるのだろうが、作品に大きくメスを入れたわけでもないので、個人的にその可能性は低いと思っている。
とすれば、2つの新人賞の「傾向と特徴」にその原因があったのではないか。
実際に「小説すばる新人賞」の受賞作を読んでみると「純文学」っぽい作品が散見されるし、一方の「小説野性時代」の受賞作を読んでみると「ラノベ」っぽい作品が多い印象を持つ。
近年の『小説野性時代』は桜庭一樹や有川浩、乙一、米澤穂信、冲方丁といった「ラノベ」チックな作家の起用が多いことを踏まえれば、やはり「小説野性時代新人賞」の傾向として、「ライトな作品」が評価されやすいと言ってよさそうだ。
さらに、選考委員の顔ぶれを見てみても、ライトな作風の作家が半数近くを占めているので、この分析はあながち的外れなものでもないだろう。
なお、『小説野性時代』の読者層は、男女比が半々、平均年齢は40歳程度と言われている。
だけど、その表紙を飾っているのは「アイドル」や「若い俳優・女優」で、一見して「ファッション誌」のような装いをしている。
この辺りから、
「KADOKAWAは若い読者の獲得を狙っているのではないか」
と、僕は考えている。
以上を踏まえて言えること、それは、
「小説野性時代新人賞」は若者ウケしそうなライトで上質なエンタメ小説を求めている
ということになる。
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特徴③「過去の受賞作」について
僕は「新人賞」への応募に際して、とにかく受賞作や選考委員の作品を読みあさった(オススメの方法については後述する)。
すると次第に賞の傾向や特徴、選考委員にウケそうな要素というものが見えてきて、具体的な対策を練れるようになっていった。
それに、自分の作品と相性がいい賞というのが必ずあるので、「受賞作を分析する」というのは絶対にしておいた方がいいと思う。
ここからは、小説野性時代新人賞の傾向と特徴をつかむのに、特に参考にできそうな3作品を厳選して紹介したい。
創作の参考になるだけでなく、作品としても面白いものを選んでいるので、単純に「オススメの本を紹介して欲しい」という人もチェックしていただければと思う。
厭世マニュアル(阿川せんり)
人生、マスクが必需品。
自称「口裂け女」ことくにさきみさとは、札幌在住の22歳フリーター。
他人とはマスクを隔てた最低限の関わりで生きてきたが、諸事情により、避けてきた人々と向き合う決意をした。
自己陶酔先輩の相手をし、ひきこもりの元親友を説得し……やっかい事に巻き込まれ四苦八苦する口裂けだが、周囲の評価は確実に変化していき――?
衝撃の結末とある「勇気」に痺れる、反逆の青春小説!
「KADOKAWAの作品紹介」より
この作品で際立っているのはテンポの良い文体と奔放な言葉遊びで、それはまるで選考委員の「森見登美彦」さながらだ。
また、登場人物が強烈にデフォルメされているので、キャラクターの個性も立っている。
「マスクを手放せない女性の心理」にフォーカスした点は、さほど珍しくはないのだけれど、文体やキャラクターのおかげで「おもしろいエンタメ小説」となっている。
全体的に軽くライトな雰囲気をまとった作品なので、個人的に「小説野性時代新人賞」のイメージに合致する作品だ。
化け者心中(蝉谷 めぐ実)
その所業、人か、鬼か――規格外の熱量を孕む小説野性時代新人賞受賞作!
江戸は文政年間。足を失い絶望の底にありながらも毒舌を吐く元役者と、彼の足がわりとなる心優しき鳥屋。この風変りなバディが、鬼の正体暴きに乗り出して――。
「KADOKAWAの作品紹介」より
「小説野性時代新人賞」の中では珍しく、「時代小説」での受賞。
ミステリー要素あり、ホラー要素もあり、そして全体の雰囲気はファンタジー的と、その独特な小説世界が評価され、選考会でも満場一致だったということ。
さらに、本作は
- 第10回日本歴史時代作家協会賞
- 第27回中山義秀文学賞
これらも同時受賞しており、「小説野性時代新人賞」の中では特に評価の高い作品だ。
ただし、文章がやや難しく、江戸文化にまつわるペダントリ―(難しめの知識)なんかもあって、「読みにくい」といった読者の声もちらほら。
とはいえ、圧倒的な評価を受けた本作は、「小説野性時代新人賞」が求める作品の特徴を知る上でも参考になると思う。
君の顔では泣けない(君嶋 彼方)
高校1年の坂平陸は、プールに一緒に落ちたことがきっかけで同級生の水村まなみと体が入れ替わってしまう。いつか元に戻ると信じ、入れ替わったことは二人だけの秘密にすると決めた陸だったが、“坂平陸”としてそつなく生きるまなみとは異なり、うまく“水村まなみ”になりきれず戸惑ううちに時が流れていく。もう元には戻れないのだろうか。男として生きることを諦め、新たな人生を歩み出すべきか――。迷いを抱えながら、陸は高校卒業と上京、結婚、出産と、水村まなみとして人生の転機を経験していくことになる。
「KADOKAWAの作品紹介」より
小説に限らず、アニメ、漫画、映画……これまで様々な分野で描かれてきた「入れ替わり」
本書もまたこの「入れ替わり」を描いているワケだが、それを「ジェンダー」という問題にうまく落とし込んでいる点が、この作品の最大の魅力だろう。
――身体と心の乖離——
人間が抱くそうした「実存的不安」を見事に描いたこの作品は、エンタメ小説とはいえ、あきらかに「純文学」的であり、歴代の受賞作の中でも「本格的な文学作品」と言って良いと思う。
あえて苦言を呈するなら、「このラノベチックな表紙はないだろ」というのが正直なところ。
作品の内容や切実さを考えれば、この表紙は完全にミスマッチだ。
とはいえ、内容については申し分ないし、創作の参考になると思うので一読の価値あり。
効果的に「対策」をするには
エンタメ小説の新人賞への応募を検討している方は、その対策として「過去の受賞作」や「受賞作家の作品」を数多く読む必要がある。
こうした作品を分析することの大切さは、多くの選考委員や編集者が口をそろえて言っていることだ。
特に「過去の受賞作品」を読む意義は大きく次の2つ。
- 賞の傾向や特徴を把握できること。
- 過去の作品との類似を避けられること。
この2つは一見矛盾するようだけれど、どちらも大切なことだ。
賞の性格にそぐわない作品を投稿することは、いわゆる「カテゴリーエラー」となってしまうし、過去の作品との類似は、その時点で「新人賞としてふさわしくない」とみなされてしまうからだ。
そこで、「過去の受賞作」や「受賞作家の作品」を格安かつ効率的に読むためのオススメサービスを2つ紹介しようと思う。
どちらも読書家や作家志望者にとって人気のサービスなので、ぜひ利用を検討していただければと思う。
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エンタメ系新人賞の 過去の受賞作をはじめ、など、角田光代、西加奈子、窪美澄、辻村深月、天童荒太、佐藤正午といった 多くの直木賞作家の作品 、さらに執筆関連の書籍 が 月額1500円で聴き放題。
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対象の作品には、エンタメ系新人賞の受賞作品をはじめ、角田光代、原田マハ、西加奈子、辻村深月、伊坂幸太郎、森見登美彦、池井戸潤などの、数々の人気エンタメ作家たちの作品も含まれている。
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