はじめに「小説を書きたいあなたへ」
この記事にたどり着いたということは、きっとあなたも小説を書く人間の一人なのだろう。
あるいは、
「これから小説を書いてみたい」
と思っている“執筆初心者”であるかもしれない。
いずれにしても、せっかく小説を書くのなら、検討したいのは「文学賞への投稿」である。
見事受賞すれば、多くの人に作品を届けられるし、大手であれば作家デビューへの道だって開けるかもしれない。
このブログでは、文学賞への投稿をゴールに据え「どのように小説を執筆するか」について詳しく解説をしている。
今回、解説したいのは主に4点。
【 この記事を読めばわかること 】
1、プロットとは何か
2、プロットの具体的な作成手順
3、プロットはどれくらい練るべきか
4、プロットを作るために必要な習慣
ちなみに僕自身、かれこれ10年以上の執筆歴がある。
その中で、地方文学賞を受賞したこともあるし、大手新人賞で予選通過をしたこともあるし、大手出版社から出版をしたこともあるし、自費出版をしたこともある。
とりあえず、人並み以上に「書くこと」について考えてきた自負はある。
また、執筆する上で数々の指南書、ありていにいえば「ハウツー本」で勉強をしてきた。
この記事では、そうした僕自身の経験と、書籍に記された「プロの意見」を参考にしている。
それでは、最後までお付き合いください。
大まかなスケジュール
本題に入る前に、まずは大まかな執筆スケジュールについて示しておこう。
ここでは「締め切りまで丸1年ある」という前提でスケジュールを組んでみたい。
もちろん、「締め切りまで半年しかない」という方もいるだろうし、「3ヶ月しかない」なんて方もいるだろう。
ここに記しているのはあくまでも目安として考えて、残された期間に応じて柔軟にスケジュールを組んでもらえればと思う。
それでは、以下が理想的な執筆スケジュールだ。
1ヶ月目 | テーマ・応募先の決定 |
2ヶ月目 | 資料の読み込み |
3ヶ月目 | プロット作成 |
4~8ヶ月目 | 執筆 |
9ヶ月目 | 全体の俯瞰 |
10ヶ月目 | 推敲 |
11ヶ月目 | 寝かす |
12ヶ月目 | 最終調整・応募完了 |
なお、執筆スケジュールについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞ。
それでは以下で、3ケ月目「プロット作成」について詳しく説明をしていく
プロットの重要性について
プロット作成のメリットは3つ
プロット作成の重要性については、多くの「指南書」で語られている。
「小説にとってプロットは生命線」
こんな風に力説する作家も少なくはなく、指南書の中には半分以上が「プロットの作成方法」を論じたものさえあるほどだ。
では、具体的に「プロットの重要性」とは何なのか。
「プロットを作成するメリット」について、シンプルにまとめると以下の通りになる。
読者を引きつける物語が書ける
プロットを作成する最大の目的は、読者を引きつける「魅力的な物語」を書くためだといっていい。
小説を書く動機として「自分の作品を誰かに読んで欲しい」という思いがあるならば、「読者が読むに耐えられる小説」を書くことが求められる。
そうした小説を、なんの計画もなしに書き切ってしまう“天才肌”の書き手も世の中にいるだろうが、(僕を含め)多くの凡人にとってそれは不可能だ。
- 各シーンのディテール
- 各シーンの配置順
- 伏線の張り方と回収
- 登場人物の描き方
そうした点について計画的に具体化していくことで、読者にとって「魅力的な作品」を描き上げることができる。
致命的な矛盾を避けられる
致命的な「矛盾」や「傷」がある小説は、読者にとって「魅力的な作品」とはいえない。
考えられる矛盾点としては、
- 登場人物における矛盾
- 時系列における矛盾
- ストーリーにおける矛盾
などが挙げられる。
これは書くジャンルにもよりけりだが、特に「ミステリー小説」や「歴史・時代小説」、「SF小説」では、「致命的な矛盾」や「傷」は絶対に避けなければならないので、入念で緻密なプロット作成を心がけたい。
執筆に行き詰まらない
個人的に、僕はこれが「プロット作成」の一番の目的だと思っている。
というのも、僕自身、プロット作成をおろそかにして、痛い目を見た経験があるからだ。
執筆の途中で「次の展開が思いつかない」と筆がとまることはザラにあったし、先に触れた「致命的なミス」が発覚してしまい、執筆そのものを断念したことさえある。
これが「長編小説」で、その終盤での執筆断念となると、目も当てられない。
プロットをきちんと練っておけば、よほどの事がない限り1つの作品を最後まで書ききることができる。
作品を完成させた時の“充実感”というのは、何物にも代えがたいものであり、それを味わいたくて小説を書いている人も多いはずだ。
逆に、作品を書ききれず、途中で投げ出してしまったときの“自己嫌悪”や“罪悪感”もまた凄まじいものがある。
そんな虚しく惨めな思いをしないためにも、小説を書く際には、プロットを作成することをオススメする。
ということで、「プロット作成のメリット」を改めて整理すると、
【 プロット作成のメリット 】
1、読者を引きつける物語が書ける
2、致命的な矛盾をさけられる
3、執筆に行き詰まらない
ということになる。
なお、「読者を引きつける物語」や「おもしろい物語」の作り方について知りたい方は、以下の記事も参考にどうぞ。
そもそもプロットとは
プロットの特徴は3つ
「プロット」は、よく建築でいう「設計図」のようなものだと説明される。
「優れた建物には、必ず優れた設計図があるように、優れた小説には、必ず優れたプロットがある」
というわけだ。
とはいえ「プロット=小説の設計図」といった説明だけでは、まったくイメージが湧かないので、ここではもう少し具体化して「プロットとは何か」について答えてみたい。
結論を言えば、プロットとは次のものを言う。
あらすじ を具体化したもの
プロットとは何かをイメージする際、
「『あらすじ』をもっと細かく、もっと具体化したもの」
と考えてもらえれば良いだろう。
たとえば、あらすじが「骨」だとすると、それに「肉」をつけ、さらに「洋服」を着せて見栄え良くしたものが「プロット」である。
では、具体的にどんな「肉」や「洋服」をたしていけば良いのだろう。
小説に必要な要素を具体化したもの
プロット作成で「具体化すべきもの」とは何だろう。
それは「5W1H」と呼ばれるものである。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
小説で書きたいシーンごとに「時間」、「場所」、「人物」、「行為」、「背景」、「程度」についての説明を加えていき、さらに「登場人物の性格や過去」や「伏線の張り方・回収方法」なんかについての説明も加えていく。
すると「より細かく、より具体的なあらすじ」ができあがることになる。
以上を踏まえると、プロットを作成する上で、
「あらすじ < プロット < 完成品」
といったイメージを持つと理解しやすいと思う。
ちなみに、人気ミステリー作家の「貴志祐介」は、とある長編小説のために「120枚のプロット」を書いたことがあるという。
さすがに、素人の僕たちにとって、ここまでのプロットを書き上げることは難しいが、プロットの重要性について大きな示唆を与えてくれるエピソードだと思う。
実際の執筆順に シーン を並べたもの
「あらすじ」という 言わば「骨」に、「肉」を付けて膨らませたり、「洋服」を着せて見栄えを良くしたりしたもの、それが「プロット」だと説明した。
ただ、プロットの特徴として、もう一つとても重要な点がある。
それが「実際の執筆順にシーンを配置している点」である。
たとえば、あなたが「恋愛小説」を書きたいと思い、次のような「あらすじ」を考えたとしよう。
【 太郎と花子の恋愛物語 】 太郎と花子は幼なじみだ。 小学校までは、互いに意識をしなかった2人。 それが中学になり、互いに意識しあうようになる。 そこに恋のライバル次郎があらわれる。 次郎は手をかえ品をかえ、2人の仲を裂こうとする。 そんな困難を乗り越えようとする太郎と花子。 ついに次郎を退けた2人は、卒業式の日に結ばれるのであった。
ここではイメージしやすいように、いかにもテンプレ通りで、かつ超シンプルな「恋愛物語」を準備した。
まず「あらすじ」というのは、多くの場合「時系列順」になっている。
上記の「太郎と花子の恋物語」について見てみると、
「幼少時代 → 小学校時代 → 中学校時代」
と、分かりやすく、一方向に時間が流れていることが分かる。
ただ、このまま小説を書いたとすると、それは恐ろしく単調でつまらない作品となるだろう。
それを避けるために「プロット」作成の段階では、各シーンの配置に工夫をこらすことになる。
たとえば、小説冒頭で「卒業式のシーン」を書いたっていいし、「次郎の画策」を書いたって良いだろう。
また、小説の中盤で「太郎と花子の幼少時代」を回想したっていいし、「小学校時代のエピソード」なんかを挿入したっていい。
要するに、プロット作成とは、
「各シーンをどういう順番で配置すれば、物語がおもしろくなるか」
このことを考えていく作業でもあるのだ。
ということで、「プロット」とは何かを改めて定義すると、
【 プロットとは何か 】
1、「あらすじ」をより具体化したもの
2、小説に必要な要素をより具体化したもの
3、実際の執筆順に「シーン」を並べたもの
ということになる。
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プロットはどれくらい練るべきか
プロット作成に正解はない
ここまで「プロットの重要性」や「プロットの特徴」について説明をしてきた。
ここでは、「プロットをどれだけ練るべきなのか」について考えてみたい。
多くの指南書の意見を参考に、さっそく結論を言うと、
「これで完成! という明確な目安はない」
ということになる。
つまり、「プロット作成に正解はない」ということである。
実際に、プロの作家の声を拾ってみると、「何をどこまで作り込んでおくか」は、人によってマチマチである。
たとえば、ほとんどプロットを練らない「村上春樹」のような作家もいれば、120枚のプロットを書く「貴志祐介」のような作家もいる。
そうした事実を踏まえつつ言えることがあるとすれば、
小説の分量によって、プロットの程度は異なる
小説のジャンルによって、プロットの程度は異なる
ということになるだろう。
”短・中編” と ”長編”との違い
まず、小説の分量に応じた、プロットの考え方についてまとめよう。
作品が長くなればなるほど、プロットの重要性は高くなるが、その理由は大きく2つある。
1つ目の理由として、作品が長くなればなるほど「矛盾」や「ミス」が生まれやすくなることが挙げられる。
その点、短編や中編小説には、そういった心配は少なくなるため、プロットもさほど重要でなくなる。
2つ目の理由として、作品が長くなればなるほど、読者を引きつける必要があることが挙げられる。
とかく、長編小説というのは、「なかだるみ」しがちだ。
それを解消するためには、随所に「山場」や「謎」を設け、読者を飽きさせない仕掛けをつくる必要がある。
そうした「仕掛け」は、行き当たりばったりで作ることは難しく、プロット作成の段階で計画しなければならないのだ。
小説ジャンルごと の違い
次に、小説のジャンルに応じた、プロットの考え方についてまとめよう。
小説というのは、大きく2つに分けることができる。
それは「物語系」と「非物語系」だ。
イメージとしては次の通り。
・物語系……中間小説、ミステリー小説、歴史・時代小説、ライトノベル ・非物語系……純文学
もちろん、このように分類できない作品もあるにはあるが、この分類は「プロット作成」に対して1つの指針を与えてくれる。
つまり、「物語系」にはプロットが必要であり、「非物語系」にはプロットはそこまで必要ないということだ。
実際に、村上春樹のように「プロットはほとんど作らない」という純文学畑の作家は多く、彼らは往々にして「物語の展開」を成り行きに任せるという。
逆に、多くのエンタメ作家(とりわけミステリー作家や歴史小説作家)は、ほぼ例外なくプロットを作成しており、「物語の展開」をある程度コントロールしながら執筆を進めるという。
ということで、「純文学」にはプロットはさほど重要ではない(不要とは言っていない)が、多くの「エンタメ小説」にはプロットが重要であると結論できるわけだ。
とはいえ、先にもふれたが、あくまでもプロットは「個人のさじ加減」に委ねられるところが大きい。
それに、「エンタメ小説」と一口にいっても、なかには純文学の要素を兼ね備える「中間小説」もあったり、致命的なミスがあってはならない「ミステリー小説」や「歴史・時代小説」があったりするので、「どの程度プロットを練るべきか」については、各ジャンルによって様々である。
結局大切なのは、
「よし、これなら書けるぞ!」
という手応えを、書き手が持つことなのだと思う。
ということで、この章のまとめ。
なお、純文学とエンタメ小説の違いについては、以下の記事を参考にどうぞ。
プロット作成のための準備
必要な準備は3つ
プロット作成をするために、必要な準備がある。
それは大きく次の3つだ。
テーマを決めること
まず「テーマの決定」についてだが、ここが創作の第一歩となる。
- 自分が普段から考えていること
- 問題意識をもっていること、
- 書きたい人物像
- 書きたい場面
- 書きたいフレーズ
テーマ決定のとっかかりは、実に様々である。
とはいえ、テーマは作品の本質やメッセージ性を決定づける最も重要なものなので、適当な気持ちで決めるべきではないだろう。
なお「テーマの決め方」について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にどうぞ。
あらすじを決めること
プロットが「あらすじをより具体化したもの」であることはすでに説明した。
となると、テーマを決めたら、つぎに「あらすじ」(物語のラフスケッチ)を書く必要がある。
ここで、さきほど紹介した【 太郎と花子の恋愛物語 】の「あらすじ」を再掲する。
【 太郎と花子の恋愛物語 】 太郎と花子は幼なじみだ。 小学校までは、互いに意識をしなかった2人。 それが中学になり、互いに意識しあうようになる。 そこに恋のライバル次郎があらわれる。 次郎は手をかえ品をかえ、2人の仲を裂こうとする。 そんな困難を乗り越えようとする太郎と花子。 ついに次郎を退けた2人は、卒業式の日に結ばれるのであった。
まずは、こんな風に箇条書きで構わないので、物語のおおまかな展開を考えてみよう。
その中でも最低限必要な点は次の2つ。
それは作品の「山場」と「結末」である。
【 太郎と花子の物語 】であれば「山場 = ライバルの登場」であり、「結末 = 2人の恋の成就」である。
ここが最低限決まっていれば、物語がブレることは基本的にないといえる。
とはいえ、これだけではさすがに具体性に乏しいので、個人的にはもっと具体化した方がよいと思う。
たとえば、
「2人が意識し合うようになったきっかけ」や、
「2人の恋を邪魔しようとする次郎の企み」や、
「2人が困難を克服していく方法」など、
具体化できる余地は十分にある。
ここは「プロット作成」で深めて行く部分ではあるものの、「あらすじ作成」の時点で、すでに具体的なイメージを持っているのであれば、それも積極的に書き込んでいくほうが良い。
なお、「あらすじの作り方」について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にどうぞ。
登場人物を決める
最後に、物語にどんな登場人物が必要かを考える。
登場人物の重要性は、多くの作家が、あるいは多くの指南書が異口同音に主張している。
そもそも、「小説」とは“人間”や“人生”を書くものだ。
“人間”不在の小説なんてものはあり得ないわけで、そう考えてみても「登場人物」というのは、小説における最も重要なファクターだといっていい。
特に、近年の文学賞では「登場人物」(キャラクター)の重要度は極めて高くなっている。
世の“文学賞”を受賞した作品には、必ずといって良いほど、読者をグッと引きつける「魅力的な登場人物」がいるからだ。
とはいえ、「登場人物」について、何から決めていけば良いか分からない人も多いと思うので、まずは次の項目について、思いつくままに書いていってみることをオススメしたい。
ここで急いで強調しておきたいのは、これら全てについてカンペキに決めておく必要はないということだ。
なので、これらは、あくまでもテンプレートの1つとして参考にしていてだければと思う。
これらは手書きでも構わないが、オススメの方法は、PCの「エクセルシート」に登場人物毎に情報を書き込んでいく方法だ。
その際に、登場人物の「履歴書」を作るようなイメージで書き込んでいくとやりやすい。
もしも、登場人物に「モデル」や「イメージする人物」がいれば、その写真なんかも張ってみても良いだろう。
具体的なビジュアルが浮かべば、執筆する際に、外見の描写も効果的にできるはずだ。
さらに、上記それぞれの項目について、「具体的なエピソード」があれば、それも書き込んでおくとプロット作成時や執筆時に役立つ。
なお、「魅力的な登場人物の作り方」について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にどうぞ。
ということで、この章のまとめ。
【 プロット作成するための準備 】
1、テーマを決めること
2、あらすじを決めること
3、登場人物を決めること
プロット作成に取りかかる
行程は大きく5つ
プロット作成に必要な準備がととのったら、いよいよプロット作成にはいっていく。
とはいえ、プロット作成が、具体的にどのような作業なのか、イメージが出来ない人も多いだろう。
ここでは、プロット作成の具体的な行程について解説をしよう。
まず、大まかな行程は次のようになる。
以上が、大まかな行程になる。
念のため言っておくと、これらは、きっちりと順番にこなしていく必要はない。
2つの行程が同時進行することもあるし、すでに済んだ行程に戻って、内容を練り直すこともある。
上記は、ざっくりとした順番なので、あくまで1つの目安としてとらえていただければと思う。
シーンの配置を決める
まずは、パソコンのワードなどを立ち上げ、それぞれのシーンの「見出し」を書きだしていく。
冒頭から結末までの「見出し」が出そろったら、今度はその「見出し」に対する内容を書き込んでいく。
まずは、各見出しの「あらすじ」を書くようなイメージでよいし、それが難しければ箇条書きでも良い。
その際に意識したいのは、大きく次の2つ。
1、ストーリー展開に起伏があるか 2、ストーリー展開が不自然じゃないか
まず、あなたが書こうとしているのが「純文学」でないかぎり、ストーリーの“緩急”や“起伏”を意識すべきだろう。
というのも、何の事件も発展もなく、ダラダラと続く物語というのは、ありていに言って「つまらない作品」だからだ。
たとえば、時系列にそってシーンを並べていっただけの小説は、ほぼ例外なくつまらなくなる。
時には「過去の回想シーン」を挿入したり、時には「登場人物のサイドストーリー」を挿入したりして、作品にメリハリをつけることが大切だ。
また、ほどよく「事件」を起こしたり、登場人物に「悩みや葛藤」を与えたりするのも効果的だ。
とにかく、各シーンを配置する上で、第一に心がけたいのは、
「どのようにシーンを配置すれば物語に起伏が生まれ、読者を退屈させないか」
という点である。
ただし、あなたが書こうとしているのが「純文学」であれば、その限りではない。
「純文学」という小説ジャンルでは、「なんの起伏もない物語」、要するに(一般的に)「分かりにくい小説」や、(一般的に)「つまらない小説」が許容されるからだ。
次に意識したいのは、「ストーリー展開が不自然じゃないか」という点である。
今度は逆に、起伏が激しすぎて、読者が“置いてきぼり”をくらってしまわないように気をつけようというものである。
- スピード感は適切か
- シーンの変わり目は急じゃないか
- 説明はきちんとされているか
- 物語に説得力はあるか
そうした観点に立ち、必要に応じて不足部分を補っていく必要がある。
「ストーリーに起伏はあるか」
「ストーリーは不自然じゃないか」
これらはつまり、
「書き過ぎのシーンはないか」
「書き足りないシーンはないか」
ということでもあるのだ。
そうした視点を持ちながら、効果的な「シーン配置」を心がけたい。
伏線をどうするか決める
「伏線のないエンタメ小説はない」
そういえるくらい、読者を引きつける上で「伏線」の存在は欠かせない。
特にミステリー小説なんかでは、伏線の重要度は極めて高いといえるだろう。
一般的に筋に乏しいと言われる「純文学」においてさえ、伏線は少なからず採用されている。
では、プロット作成の段階で、どのように伏線を扱えばいいのか。
結論を言えば、「あまり難しく考えなくて良い」ということになるだろう。
なぜなら、物語の結末とそこにいたるまでの展開が明確にイメージできていれば、その都度その都度、自然と伏線を張りたくなるものだからだ。
むしろ、伏線の“張りすぎ”に注意をした方がちょうど良いくらいだ。
実際に僕の場合、プロット推敲の段階で、
「ちょっと匂わせすぎたかな」
と感じ、張りすぎた伏線を削るってことがわりと多い。
つまり、伏線は張りすぎず、張らなさすぎず、適度な配置を心がけることが大切になる。
シーンをさらに具体化する
配置された各シーン、その内容を書き込んでいく際、とにかく具体的に書くことを心がけたい。
具体的な設定が与えられることで、物語はどんどん魅力的になっていくし、執筆がスムーズに行くからだ。
とはいえ「何を具体化していいか分からない」という人のために、具体化すべき項目を5つあげる。
シーンの時間・場所について
1と2については、まとめて「舞台設定」と言い換えることができる。
この際、意識したいことは、
「登場人物をもっとも効果的に動かすために、どんな舞台が必要か」
である。
シーンの時間帯が決まったら、そのシーンの風景について書き込んでおくと、執筆時に役立つ。
また、シーンの舞台は、実在の地名を採用するか、架空の地名を採用するかも、よく考えたい。
両者のメリット・デメリットを簡単に整理すると次のようになる。
以上を参考にしつつ、舞台設定について考えたい。
すべて実在の地名でいってもいいし、すべて架空の地名でいってもいいし、両者を混合してもいい。
とにかく大事なのは「その舞台に必然性があること」だ。
登場人物の言動・外見・内面について
3、4、5については、小説の“柱”となる内容である。
小説が魅力的になるかどうかは、「魅力的な登場人物」が書けるか否かにかかっている。
準備しておいた「人物設定」を念頭に、
「一人一人をどう動かせば、物語がおもしろく転がっていくか」
このことを意識して、人物の言動や心理描写を考えていくと良い。
また、人物の「苦悩」や「葛藤」は、読者に共感できるように書いていくことも心がけたい。
なお、「魅力的な登場人物の作り方」については、以下の記事で詳しくまとめているので、ぜひ参考にどうぞ。
プロットを推敲する
プロットがいったんできあがったら、それを推敲する必要がある。
推敲の具体的行程は「添削、修正、補筆」である。
とはいえ、あくまでも推敲の対象は「プロット」なので、そこまで丁寧に推敲をしなくてもよい。
文章や表現についての推敲は、作品の第一稿が完成してから行うべきで、この段階では主に「構成」について推敲することになる。
確認すべき点は、大きく6つ。
1の「時系列」でのミスとして想定されるのは、「年齢の数え間違い」や「時間経過の計算ミス」などが挙げられる。
登場人物の年齢だけでなく、年代、年号、季節、月などを具体的に書き込むと、それらの経過に伴う矛盾やミスというのが起こりがちになる。
2の「場所」にまつわるミスとして想定されるのは、「上下左右・東西南北のミス」や「地図上のミス」などが想定される。
ざっくりとした空間イメージをしていると、物理的にあり得ない描写をしてしまいがちなので、プロット作成の段階で矛盾やミスがないかをチェックしたい。
3の「伏線」でのミスも起こりがちで、「伏線の張り忘れ」や「伏線の回収忘れ」の2つに注意したい。
4の「内容の過不足」は、プロットを通読してみなければ分からない部分なので、必要に応じて加筆と修正、削除を適切に行おう。
5の「専門知識や事実把握」については、気になったところは、その都度ネットや書籍で調べ直さなくてはならない。
基本的には、プロット作成をする前に、必要な知識・情報は入念にリサーチをするべきなのだが、ここではその最終チェックといったイメージだ。
6の「倫理性」については、差別用語はまずNGだという認識を持とう。
あとは、小説全体を貫く「倫理性」については、様々な意見があると思うが、基本的には「非倫理的内容」は避けた方が無難だと思う。
これは、ミステリー作家の森村誠一も強調していることだが、基本的にエンタメ小説というのは読者の「読後感」が重視される。
少し古い小説になるが、『バトルロワイヤル』という有名なサバイバル小説がある。
本書は当時、「日本ホラー小説大賞」の最終候補に残ったものの、そのあまりに非倫理的な内容によって、受賞を逃している。
まして、コンプライアンスが厳しくなっている昨今の状況を踏まえると、「非倫理的な内容」は避けるのが無難だと言えるだろう。
以上がプロット推敲の具体的なポイントとなる。
これらは、作品にきちんと「筋が通っているか」や「テーマ・内容的に問題ないか」のチェックであり、ここが徹底されていないと「致命的な欠陥」につながる可能性もあるので、推敲は入念に行いたい。
タイトルを決める
最後に「タイトル」について軽く触れておきたい。
タイトルについての考え方としては、以下の3点を参考にしてほしい。
言うまでもないことだが、「タイトル」が読者に与えるインパクトはとても大きい。
魅力的なタイトルというのは、読者の想像を膨らまし、作品をより豊かに魅せてくれるものだ。
では、「魅力的なタイトルの条件は」というと、一概にいうことはできない。
ただ、強調しておきたいことは「タイトルがまずくて落選することがある」ということだ。
これは、文学賞の講評なんかを読んでいると分かることで、
「内容はいいのだけど、タイトルが致命的なので候補から外した」
といった発言をする選考委員が少なからずいる。
したがって、どんなタイトルをつけるかは、小説の内容と同じくらい熟考すべき案件なのである。
では、どのタイミングでタイトルを考えるべきかといえば、残念ながらこれも答えはない。
タイトル先行で小説を書き始める人がいるかと思えば、小説完成後にタイトルを決める人がいるなど、実にさまざまである。
とはいえ、タイトルが決まるのは早いに越したことはない。
ミステリー作家の貴志祐介は、プロットを組み立てる段階で、とにかく仮のタイトルをつけるという。
理由は、早い段階からタイトルが決まっていると、気分良く筆が進むからというもの。
僕自身も、タイトルがはやく決まっていた方が、作品に愛着が生まれ、執筆のモチベーションが上がるタイプなので、プロット作成と並行してタイトルを決めることが多い。
ということで、この章のまとめ。
【 プロット作成の行程 】
1、シーンの配置を決める
2、伏線をどうするか決める
3、シーンを具体化していく
4、プロットを推敲する
5、タイトルを決める
創作する上で意識したいこと
意識すべきは4つ
ここまで「プロット作成」について、その具体的手順について解説をしてきた。
最後に、魅力的なプロットを作るために、普段から意識すべきことについて紹介したい。
まず、結論は以下の通りだ。
人間を観察・分析する
いきなり曖昧なアドバイスで恐縮なのだが、とにかく一番大切なのは「“人間”について興味を持つこと」だ。
そして、人間を観察し、分析をしてみることが大切だ。
対象は誰でも良い。
まずは身近な人からで構わない。
いい人も悪い人も、親しい人も苦手な人も。
「どうしてこの人は、こういう言動をするのだろう」
「この人の言動の背景には、いったい何があるのだろう」
こんな風に、とにかくいつも彼らの言動にアンテナをたて、彼らの心理を分析してみる習慣をつける必要がある。(というか、小説を書きたい! って人には、すでにそうした習慣が付いていると思う.……)
想像力を働かせる
その延長で、想像力を働かせることも大切になる。
たとえば、
「もしも、〇〇が××だったら、あの人はどういう言動をしたのだろう」
といった発想で、ひたすら思考を深めていくと良いだろう。
そうした「もしも」の発想は、小説の中心テーマにつながることがある。
ミステリー作家の貴志祐介は次のように説明している。
創造力を膨らませる思考訓練として私がよく実践しているのは「もし〇〇が××だったらどうなるか」ということ。日常生活のなかにある普通の出来事を“ひとひねり”して、みるのだ。そのままの状態であれば珍しい事象でなくても、極端にエスカレートさせてみたり、あるいは図式を逆転させてみたりするとどうなるか、創造をめぐらせてみるのである。(貴志祐介『エンタテイメントの作り方』より)
こうした思考訓練が、魅力的な登場人物を作り上げることへと繋がっていく。
たとえば、文豪の芥川龍之介はその類いまれな想像力によって「極限状況」を作りだし、人間の本性を暴こうとした作家である。
代表作『羅生門』は、まさにそうした作品の代表であり、その発想や構成や心理描写など、参考にする点は非常に多い。
取材や情報収集を欠かさない
それから、情報収集や取材というのも必要だ。
これは何も、取材旅行へ行こうとか、インタビューをしようとか、そういうことではない。
テレビや映画、マンガ、ニュースからの情報に触れて、ちょっとでも「使えそうだ!」と思ったものは、きちんとメモをしようと言うことなのだ。
たとえば、事件、事故、地域、職業、文化、歴史などなど。
能動的に得た知識も、受動的に得た知識も、「すべては小説の種になるかもしれない!」という意識をもって生活をすることが大切だ。
とにかく読書をしまくる
そして、なんといっても「読書」である。
これは、あらゆる作家、編集者、文芸評論家が口をそろえていうことだ。
「小説家になるためにどんな訓練や習慣が必要ですか?」
こうした質問に対して、村上春樹は次のように答えている。
小説家になろうという人にとって重要なのは、とりあえずたくさん読むことでしょう。実にありきたりな答えで申し訳ないのですが、これはやはり小説を書くための何より大事な、欠かせない訓練になると思います。小説を書くためには、小説というのがどういう成り立ちのものなのか、それを基本から体感として理解しなくてはなりません。
(村上春樹『職業としての小説家』より)
小説を書く上での「読書のメリット」については、この記事で扱い切れないくらいに多い。
ただ、それをムリヤリ一言にまとめるなら、
「書き手・読み手としての目をこやすこと」
ということになるだろう。
それは、言葉で説明できるものでも、言葉で理解できるものでもない。
ホンモノに触れるなかで、体感的に理解すべきものなのだ。
そもそも「小説を書きたい!」と思ったあなたは、一方では「本好き」だったり「読書家」だったりするはずだ。
であれば、なにも難しいことはなく、これまで通り、自分が良いと思う、自分が好きな作品をとことんまで読めばいいのだ。
ただ、これから意識すべきことは、「“自分だったらどう書くか”という視点を持って小説を読むこと」である。
そうした視点で作品を読んでいくと、文章力や表現力、構成力の向上にもつながるからだ。
とはいえ、「読書をしたいけど、時間がない!」という人は実際多いと思う。
そんな人は 【 Audible(オーディブル) 】などのオーディオブックを利用すれば、すき間時間で効率的にインプットすることができるので、ぜひ積極的に活用したい。
【 参考記事 】
この記事のまとめ
この記事では主に4つのことについて解説をしてきた。
【 この記事で解説したこと 】
1、プロットとは何か
2、プロットの具体的な作成手順
3、プロットはどれくらい練るべきか
4、プロットを作るために必要な習慣
それぞれのトピックについて、結論をまとめると以下の通り。
初めて小説を書く人にとって「プロット作成」は、とても難しいことに思われるかもしれない。
まずは、ぼんやりとしたもので構わないので、自分の描こうとする物語を思いつくままに書きつけて行けばOKだ。
あまり難しく考えることなく、まずは、PCの前でキーボードを叩くところから始めることが大切だと思う。
執筆は「自分が楽しんでなんぼ」であり、「自分が気持ちよくてなんぼ」の世界である。
結局のところ、書きたいから書くのであって、その原点を忘れなければ、きっと1つの作品を描き上げられるはずだ。
ぜひ、楽しんで執筆を続けていきましょう。
この記事が、あなたの執筆ライフの一助になれば幸いです。
それでは、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
”Audible”で時間を有効活用
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活字ではなく”音声”で聴くことによって、文章のリズムや息遣いが伝わってくるので、文章力を磨く上でも有効だ。
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執筆に関する書籍も読み放題なので、とても役に立つサービスとなっている。
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