はじめに「エンタメ小説の新人賞」
エンタメ小説とは純文学に対置されて語られることが多く、別名「大衆文学」と呼ばれたりもする。
「エンタメ小説」と「純文学」両者の違いついては、こちらの記事 【 【純文学とエンタメ小説の違い】を分かりやすく解説 】 を参考にしてほしいのだが、「エンタメ小説って何?」という問いにシンプルに答えるならば、
「読者を飽きさせない面白い物語」
ということになるだろう。
そんなエンタメ小説を対象にした、公募の新人賞は数多くある。
これについても、詳しくはこちらの記事【 【公募エンタメ小説新人賞】の傾向・特徴を徹底解説 】を参考にしてほしいのだが、その中でも「ジャンル問わず」広く募集をかける長編新人賞が次の4つである。
この4つの賞が他の新人賞と異なる点は、いわゆる「ノンジャンル系」の小説を受け入れる点だ。
また、それぞれの賞には、それぞれの賞の“色”というものがあるので、たとえば、「エンタメ小説を書いて、小説を応募してみたい!」という思いがある人は、各賞の傾向や特徴を把握しておく必要がある。
ということで、今回は「松本清張賞」(文藝春秋)について解説をしてみたい。
記事では主に「賞の概要」と「賞の特徴と傾向」、「代表的な受賞作」についてまとめていく。
また、最後に作品を書く上での「効果的な対策方法」と、その「おすすめサービス」について紹介するので、ぜひ参考にしていただければと思う。
参考までに、恥ずかしながら僕の「執筆経歴」については(ぱっとしないけど)以下に挙げておく。
では、どうぞ、最後までお付き合いください。
概要をチェック
詳しい解説に入る前に、まずは賞の概要をチェックしておく。
※松本清張賞のHP はこちら
出版社 | 文藝春秋 |
賞金 | 500万(+記念品) |
枚数 | 100枚~200枚 (40字×30行) |
応募締め切り | 10月末 |
発表 | 6月 |
応募総数 | 600~800編程度 |
主な受賞者 | 葉室麟(2007年) 川越宗一(2018年)など |
その他 | 必ず単行本化 |
特徴➀「推理、時代、歴史小説」が強い
そもそも「松本清張」とはどんな作家だったかといえば、推理小説、時代・歴史小説の名手であり、上質なエンタメ小説を生み出す稀代のストーリーテラーだった。
そんな大作家の業績を記念して1994年に創設したのが、この「松本清張賞」である。
ということで、この賞の創設理念としては、
「上質な推理小説や、時代・歴史小説を発掘すること」
というのがあったわけで、実際、2003年までは推理小説や、時代・歴史小説のみを対象としていた。
それが2004年以降は「ジャンルを問わない長編エンタメ小説」を対象とするようになり現在に至っている。
とはいえ、「ジャンル不問」にした後もしばらく、推理小説や、時代・歴史小説に強い新人賞でありつづけ、それは基本的に今でも変わらないと感じている。
いわゆる「ノンジャンル系」とか「中間小説」で勝負したいなら、別の「小説すばる新人賞」とか「小説現代長編新人賞」で勝負した方がいいし、「ファンタジー小説」で勝負したいなら、別の「日本ファンタジーノベル大賞」で勝負した方がいい。
近年の受賞作品を見てみると、「ノンジャンル系」、「ファンタジー」、「SF」などジャンルは様々なのだが、そのレベルは「うーん」といった感じ。
もっとも、「受賞さえすればOK」みたいな人は、あえてそこを狙ってもいいのかもしれないけれど「将来、作家として生きていきたい」という志があるのなら、「時代小説」とか「歴史小説」で勝負するべきなのかもしれない。
特徴➁「現役で活躍する作家は少ない?」
正直、松本清張賞の「認知度」はそれほど高くなく、「ジャンル問わず」の長編エンタメ新人賞であれば「小説すばる新人賞」(集英社)の方が圧倒的に人気も実績も上だ。
ためしに、松本清張賞出身の有名作家を並べると、
と、ざっとこんな感じで、そのほとんどが時代・歴史小説畑の作家であることがわかる。
また、2022年現在で直木賞を受賞した作家は、
- 葉室麟(2012年)
- 川越宗一(2020年)
の2人であり、葉室麟は「時代小説」での、川越宗一は「歴史小説」での受賞となった。
こんな感じなので、松本清張賞出身で、かつ現役で活躍する作家の数は決して多いとはいえない。
そして、数少ない現役作家を見てみても、そのほとんどが「時代・歴史小説」畑の作家だといえる。
特徴➂「“人間”を描いた作品を評価」
エンタメ小説の新人賞では、とにかく「面白い作品」を書けば受賞できるかといえば、もちろんそんなことはない。
もちろん、「おもしろい」というのは超重要な要素で、過去の選考委員の選評なんかを読んでいると、
「瑕疵や欠点はあるものの、とにかく面白いので、この作品を推した」
なんてコメントが散見されたりもする。
ただ、この松本清張賞においては、「おもしろい」だけの作品じゃダメで、その中で“人間”を誠実に描かなければならないようだ。
というのも、上記で紹介した作家たちのほとんどが“人間とは何か”という問いを掲げ、歴史的なモチーフを扱いつつ、“人間”をするどく洞察しているからだ。
この点は、さすが「松本清張」の冠がつくだけあって、彼の文学観や理念を継承しようという「日本文学振興会」の思いが伝わってくる。
とはいえ、近年の「ノンジャンル系」や「ファンタジー系」の受賞作の中には、「ちょっと軽すぎやしないか?」という作品が多いような気がするので、個人的には、いっそのこと再び「時代・歴史小説」に特化した方がいいのになあと思っている。
もっとも「小説がライト化している」というのは、大なり小なり、どの新人賞にも言えることだと思うので、「まぁ、そういう時代の要請だよな」なんて、僕は考えている。
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オススメ作品3選
僕は「新人賞」への応募に際して、とにかく受賞作や選考委員の作品を読みあさった(オススメの方法については後述する)。
すると次第に賞の傾向や特徴、選考委員にウケそうな要素というものが見えてきて、具体的な対策を練れるようになっていった。
それに、自分の作品と相性がいい賞というのが必ずあるので、「受賞作を分析する」というのは絶対にしておいた方がいいと思う。
ここからは、松本清張賞の傾向と特徴をつかむのに、特に参考にできそうな3作品を厳選して紹介したい。
創作の参考になるだけでなく、作品としても面白いものを選んでいるので、単純に「オススメの本を紹介して欲しい」という人もチェックしていただければと思う。
烏に単は似合わない (阿部智里)
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。
朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか? あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場!
(「内容紹介」より)
阿部智里代表作「八咫烏シリーズ」の第一段。
この作品の最大の魅力は、そのプロットと伏線回収だといっていい。
とにかく「どんでん返しの連続」で、読者の期待や予想の斜め上を行くような展開で、読後はキャラクターや物語への印象が180度変わってしまう。
これを20歳そこそこの女子大生が描いたのだから、その才能にも驚かされる。
こういう作品を読むと、
「作者は書き始めの時点で、どこまでを決めていたのだろう」
と、その小説設計の方法について、とても興味深く考えてしまう。
いずれにしてもシリーズ化も納得のファンタジー小説。
個人的にも、いずれ続編を読んでみたいと思っている。
天地に燦たり (川越 宗一)
戦を厭いながらも、戦のなかでしか生きられない島津の侍大将。
被差別民でありながら、儒学を修めたいと願う朝鮮国の青年。自国を愛し、「誠を尽くす」ことを信条に任務につく琉球の官人。豊臣秀吉の朝鮮出兵により侵略の風が吹き荒れる東アジアを、三つの視点から克明に続く。
(「内容紹介」より)
薩摩、琉球、朝鮮という3つの異なる国に生まれ育った3人の主人公の人生が交錯するという壮大なストーリー。
作品を一貫して貫いているのは「仁」や「礼」といった儒教道徳だといっていい。
その辺のライトな作品と一線を画すような、本格的な「歴史小説」なので、ところどころで読む手を止め、じっくりと味わう必要がある。
やや難解な場面もないではないが、“人間”を掘り下げようとする作者の意図は参考にしたい。
描かれているのは「朝鮮出兵」という過去の出来事ではあるが、現代の国際情勢への大きな示唆を与えているようだ。
「歴史という“特殊”を扱いつつも、人間の“普遍”的な問いへ」
まさに歴史小説の本質をついた作品だと思う。
銀漢の賦 (葉室 麟)
寛政期、西国の小藩である月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、名家老と謳われ、幕閣にまで名声が届いている松浦将監。
幼なじみで、同じ剣術道場に通っていた二人は、ある出来事を境に、進む道が分かれ、絶縁状態となっていた。二人の路が再び交差する時、運命が激しく動き出す。
(「内容紹介」より)
さすがは直木賞作家! という葉室麟のデビュー作は、すでに大作家としての「貫禄」がうかがえる時代小説だ。
ストーリーが面白いのはいうまでもないが、そこで描かれる“人間”たちの姿に胸を打たれる。
立場の違う3人の男たち、めいめいに与えられた運命、身分を超えた深い友情……
読後は切なくも温かい読後感で、葉室作品のなかでも「傑作」の呼び声が高い。
ストーリー展開、プロット、人物造形、心情描写、そして読後感……
どれをとっても第一級の上質なエンタメ小説で、「松本清張賞」を代表する作品だと思う。
効果的に「対策」をするには
松本清張賞への応募を検討している方は、その対策として「過去の受賞作」や「受賞作家の作品」を数多く読む必要がある。
こうした作品を分析することの大切さは、多くの選考委員や編集者が口をそろえて言っていることだ。
特に「過去の受賞作品」を読む意義は大きく次の2つ。
- 賞の傾向や特徴を把握できること。
- 過去の作品との類似を避けられること。
この2つは一見矛盾するようだけれど、どちらも大切なことだ。
賞の性格にそぐわない作品を投稿することは、いわゆる「カテゴリーエラー」となってしまうし、過去の作品との類似は、その時点で「新人賞としてふさわしくない」とみなされてしまうからだ。
また、多くの資料を渉猟し「歴史的背景」を把握しておくことも必要不可欠だろう。
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